バレー界のホープはWBCから刺激受ける元野球少年 髙橋藍が五輪予選に向けてイタリアで感じること

田中夕子

世界で求められる積極性と結果

チームからの信頼も増し、大事な場面で自分に託してくれることが増えたと感じている 【平野敬久】

 トスの高さやスピード、タイミング。セッターとは常に細かく確認し合い、互いに感覚をつかむ。そのやり取りは日本もイタリアも変わらない。日本代表では「関田(誠大)さんが自分の長所を理解して、合わせてくれるので自分が活かされている」と言うが、合わせてもらうばかりでなく自分から合わせに行く。ここでもやはり求められるのは積極性だと繰り返す。

「パドヴァでも信頼を置かれているのは感じるし、現に試合でも大事な場面で自分に(トスを)託してくれるケースが増えた。それだけでも自分の攻撃がこのチームにとって力になっていると感じるし、だからこそもっと積極的に、受け身ではなく自分から『こうしたい』と伝えていくのが必要だと思います。もちろんうまく行かない時や、相手のほうが上回る時、特にこっちは高さが求められるので、オポジットが2m超えの選手になると自分は小さいからスタメンで出してもらえなかったり、交代を命じられることもありましたけど、別にそれだけのことであって、クヨクヨする必要はない。じゃあ次に結果を出そう、出してやると思うし、その積み重ねが監督やチームからの信頼、次につながる。結果がすべての世界だから、面白いですよ」

21歳はパリ五輪予選にどう向かう?

 レギュラーラウンドは10位、現在は9位から11位の順位決定リーグを戦い、終われば2年目のイタリアでのシーズンは閉幕する。息つく間もなく、また次の戦いが待っていて、時折冗談半分で「たまにはもっと遊びたいし、日本でいろいろいろ楽しいことしたいんやけどなぁ、とか思いますよ」と笑うが、9月に開催されるパリ五輪予選に向け、バレーボールにまい進する日々は続く。

「東京オリンピックは経験させてもらったけれど、オリンピック予選は経験したことがありません。どの国も出場権を得るために必死だし、そこで勝ち抜くのは大変だと思います。でも、そういうプレッシャーがかかる場面こそ楽しいし、バレーボールが注目されるチャンスでもあるので。楽しみしかないし、たくさんの人に見てほしい。それこそカップルで、バレー見に行くか、ぐらいの軽い感覚で来て『楽しかったね、また来ようか』と思ってもらえたら嬉しい。そのためにも頑張らなきゃと思うし、ワクワクしかないですよ」

 野太い声援も黄色い声援もすべて受け止め、力に変える。21歳のあくなき挑戦はまだまだこれから。可能性は広がるばかりだ。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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