連載:愛されて、勝つ 川崎フロンターレ「365日まちクラブ」の作り方

クラブはまちづくりのパートナー 福田紀彦川崎市長が語るフロンターレ

原田大輔

周囲を掛け合わせる力がフロンターレの強み

22年8月には川崎市とクラブがSDGsの達成に向けて協定を締結している 【(C)川崎フロンターレ】

 地域における川崎フロンターレの活動が認められ、川崎市におけるクラブの存在感も増したことで、以前は川崎フロンターレの担当者は案件によって担当部署を探して対応するような状況だったが、川崎フロンターレをはじめ、スポーツに関する窓口が集約されるようになり、2010年には市民スポーツ室という部署が設置された。現在、川崎市をホームタウンとするスポーツチームは、川崎フロンターレだけでなく、Bリーグの川崎ブレイブサンダース、アメリカンフットボールの富士通フロンティアーズといくつもあるが、川崎フロンターレについては、市民スポーツ室内に「Jリーグ支援担当」という専任の担当者が置かれている。それだけ、自治体とクラブが一緒になり取り組んでいる事業が多い証拠だった。

 2015年に国連で採択された「2030アジェンダ」に掲げられた、国際社会全体で取り組むべき世界共通の目標―「SDGs(持続可能な開発目標)」では、「誰一人取り残さない」ことをキーワードに、国や自治体、企業、市民など、すべてのステークホルダーが役割を担い、17のゴールと169のターゲットの達成を目指して取り組むことを求められている。

 川崎フロンターレが地域で行っている活動の多くが、SDGsに当てはまっていたように、川崎市とクラブが取り組んできたことの多くもSDGsに通じていた。

「川崎市としては、地域の課題解決に向けて、川崎フロンターレと一緒に取り組んでいきたいというスタンスでいます。これまでの経験則から見ても、周囲を巻きこむ力や、周囲を掛け合わせる力がフロンターレの強みです。SDGsには17の目標があり、取り組んでいくには“掛け合わせ”が必要です。一人や一つの団体でやるのではなく、いろいろな仲間と一緒に協力していくことで、ゴールを達成できる。また、これはクラブも同じ考えだと思いますが、川崎市としてもこれまで行ってきた多くの活動や施策はSDGsにつながるもので、SDGsという名前があとからついてきたものがほとんどでした」

 川崎市ではSDGsの達成に向けて市がプラットフォームになり、企業・団体を登録・認証する制度「かわさきSDGsパートナー」をスタートさせている。すでに企業やNPO法人、学校など3000社・団体が登録されているという。

 2022年8月7日には、川崎市と川崎フロンターレが、SDGsの達成に向けて相互に連携、協力することを目的とした協定を締結した。記者会見には、川崎フロンターレの代表取締役社長・吉田明宏とともに、川崎市を代表して福田市長も登壇した。併せて、市とクラブ、さらには川崎フロンターレのパートナー企業も一緒に手を取り、かわさきこども食堂ネットワークが抱える課題の解決を支援していくことも発表した。

「かわさきこども食堂ネットワークの支援は、まさに先ほど言った掛け合わせです。その活動からもわかるように、川崎フロンターレ以上に『まちづくりのパートナーとはこういうことだ』と示すような取り組みをしてくれているスポーツクラブはないと思います」

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著者プロフィール

1977年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務めた後、2008年に独立。編集プロダクション「SCエディトリアル」を立ち上げ、書籍・雑誌の編集・執筆を行っている。ぴあ刊行の『FOOTBALL PEOPLE』シリーズやTAC出版刊行の『ワールドカップ観戦ガイド完全版』などを監修。Jリーグの取材も精力的に行っており、各クラブのオフィシャルメディアをはじめ、さまざまな媒体に記事を寄稿している。

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