連載:WBCプール展望&ライバル国分析

【WBC優勝候補分析】大舞台の成功と失敗から学んだ納得の陣容 栗山ジャパンの強みとは?

データスタジアム株式会社

メジャーリーガーと令和の三冠王が中心となる野手陣

【Getty Images】

主な守備位置
捕手:甲斐拓也、中村悠平、大城卓三
一塁手:山川穂高、岡本和真
二塁手:山田哲人、牧秀悟
三塁手:村上宗隆
遊撃手:源田壮亮、中野拓夢
外野手:ラーズ・ヌートバー、鈴木誠也、吉田正尚、近藤健介、周東佑京
DH:大谷翔平


 野手陣における最大のサプライズ選出となったのは、ラーズ・ヌートバー。母親が日本人のヌートバーは、侍ジャパンで初となる日系人の代表選手だ。メジャー2年目の昨季は、カージナルスで14本塁打を放ち、出塁率.340をマーク。優れた選球眼と強肩を生かした守備力が持ち味の選手で、代表ではセンターでのスタメン出場が濃厚だ。このほか、ライトは昨季からカブスでプレーしている鈴木誠也、レフトはレッドソックスに移籍した吉田正尚と、外野はメジャーリーガーの3名が中心となる見込み。そして、DHには二刀流の大谷が入る可能性が高い。日本のファンの前でプレーするのは久しぶりのことになるが、進化した姿を披露してくれるに違いない。

 国内組では、村上宗隆が主軸の1人となる。昨季56本塁打を放って三冠王に輝いた打棒はもちろんのこと、ヤクルトで見せているチームを引っ張るリーダーシップも期待される。内野手はサード村上のほか、ショートで5年連続ゴールデングラブ賞に輝いている源田壮亮がレギュラーとなる見込みだ。一方で、ファーストとセカンドは流動的な起用が予想される。走攻守のバランスに優れた山田哲人、通算打率.302と巧打が売りの牧秀悟、本塁打王を3度受賞している山川穂高、勝負強さが魅力となる岡本和真の使い分けは、栗山監督にとっても悩みどころだろう。また、主力打者の多くが左打者ということもあり、彼ら右打者の働きは攻撃のキーポイントとなる。

 捕手は過去の大会と同様に3人体制となった。国際大会の経験が豊富な甲斐拓也がメイン捕手となりそうだが、昨季の打撃不振は不安視されるところ。3人の捕手のうち誰をスタメンに起用するか、また代打のタイミングなど、絶対的な選手が不在なだけに指揮官の采配が問われる部分だ。そして、バックアップ要員には周東佑京が選出された。抜群の脚力と内外野をこなすユーティリティー性は、代走や守備固めとして申し分ない。

出塁率と長打力を重視したラインアップ

 野手陣は出塁率と長打力に優れた選手の選出が目立つ。かつての日本代表は、機動力を生かしたスモールベースボールを打ち出していたこともあったが、今大会は盗塁を得意とする選手があまり多くない。準々決勝までの5試合は、ホームランの出やすい東京ドームで開催されるため、パワーのある打者が優位な環境でもある。

 また、侍ジャパンはWBCでの直近2大会、いずれも準決勝で敗退している。2013年のプエルトリコ戦、2017年のアメリカ戦はともに1得点にとどまっており、攻撃力不足が敗因となった。そうした過去の反省を踏まえ、打力を重視したメンバーの選出となっているのだろう。準決勝からは、MLBで活躍する投手との対戦が多くなるだろうが、過去の大会では彼らの“速くて動くボール”に苦戦していた。2013年の野手は国内組のみで、2017年も青木宣親以外にMLB所属の野手がいなかった。そのような過去2大会と比較して、今回の日本代表にメジャーリーガーの野手が多いことは明るい材料だ。

 日本代表史上最多タイとなる5名のメジャーリーガーが参戦するなど、今大会の侍ジャパンは厚みのある陣容を誇る。その一方で、選出メンバーのうちWBCに出場した経験があるのは4名のみ。20台前半の選手も多く、非常にフレッシュな陣容となった。最年長となるダルビッシュは、2009年の第2回大会で優勝を経験している唯一の選手。大黒柱のダルビッシュを中心に、若きスターを加えたドリームチームが、悲願の世界一奪還に向けて力強く踏み出そうとしている。

2/2ページ

著者プロフィール

日本で唯一のスポーツデータ専門会社。 野球、サッカー、ラグビー等の試合データ分析・配信、ソフト開発などを手掛ける。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント