連載コラム「工藤公康の野球ファイル」

工藤公康が2022年パ・リーグ先発投手を振り返る 山本由伸&佐々木朗希の凄さを独自の視点で分析

工藤公康

佐々木朗希ならではの投球フォームとは?

佐々木朗希の投球フォームについて、工藤氏は下半身の動きに着目する 【写真は共同】

 今シーズンは規定投球回数には到達できませんでしたが、完全試合達成など私たちに大きなインパクトを与えてくれたロッテの佐々木朗希投手。奪三振率は12.00を超え、被打率も.177と、どちらも先発投手陣の中では圧倒的なデータです。

 佐々木投手も自分自身の身体の特徴を活かしたフォームだと思います。ランナーがいない時には足を高く上げ、位置エネルギーを利用して、体重移動の際に加速させる力を生み出しています。クイックの時には、足を高く上げる代わりに、踏み込み脚の股関節の捻りの動きを利用して、下半身から回旋のエネルギーを生み出し、運動連鎖のきっかけを作り出しています。160キロの投球を上半身だけで生み出すことは、怪我のリスクも非常に高まり、ボールのコントロールも難しくなります。踏み込み脚を中心とした股関節のあの動きは、佐々木投手の能力を引き出す投球の特徴のひとつだと考えます。

マネではなくオリジナリティの追求を

筋力や骨格など身体の特徴は人それぞれ。プロで長く活躍するために、自分ならではの投球動作を作り出すことが必要だと工藤氏は考える 【写真は共同】

 今回、今シーズンに活躍した二人のパ・リーグの先発投手について書かせていただきましたが、注意してほしいことも一緒にお伝えしたいと思っています。

 山本投手の体重移動や佐々木投手の足の使い方など、投球フォームをマネすることができれば、誰でもスムーズな運動連鎖が習得できたり、同じような投球ができるのでしょうか? 私は不可能に近いと思います。踏み込み脚の筋力や股関節周りの柔軟性など、様々な要素が絡み合ってその動きになります。加速をすればそれを制御したり、減速・ストップさせる筋力や身体の使い方を身につけたり、多くの身体的な要素を整えなければ、自分自身のピッチングをコントロールできなくなってしまいます。

 大切なのは、自分のフォームの特徴や身体の状態、強みを理解することだと私は思います。100人いれば100通り、選手一人ひとりのオリジナリティがあります。筋力や柔軟性、身体の使い方や感覚の捉え方など、千差万別です。いかに自分の身体や状態に合わせた投球動作を作り出せるか。余計な力を抜いて“ゼロ”を作りだし、自分の身体・フォームを制御できるかが、パフォーマンスを発揮していく上で重要な部分だと思います。

<第4回につづく>

(企画構成:スリーライト)

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著者プロフィール

1963年5月5日生まれ。愛知県出身。名古屋電気高校(現:愛知名電高校)から1981年、西武ライオンズからドラフト6位指名を受け、入団。西武黄金期を支え、福岡ダイエーホークス、読売ジャイアンツ、横浜ベイスターズに在籍。現役時代は14度のリーグ優勝、11度の日本一に貢献し、優勝請負人と呼ばれた。現役通算で224勝を挙げ、最優秀選手(MVP)2回、最優秀防御率4回、最高勝率4回など数多くのタイトルに輝き、正力松太郎賞は歴代最多に並ぶ5回受賞。2016年には野球殿堂入りを果たした。2011年に現役を引退後、2015年に福岡ソフトバンクホークスの監督に就任。7年で3度のリーグ優勝と5度の日本一に導いた。現在は野球評論家として活動しながら、筑波大学大学院博士課程に進学。スポーツ医学博士取得に向け研究や検診活動を行っている。

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