東福岡、報徳学園、東海大大阪仰星が有力 優勝候補から見る全国高校ラグビー大会展望

斉藤健仁

前回準Vの国学院栃木は悲願の初優勝なるか

司令塔で主将の伊藤を中心に、昨季の悔しさを知るメンバーが国学院栃木を初の頂点に導けるか 【斉藤健仁】

 Aシード校には選ばれなかったものの、昨年度準優勝だった国学院栃木も十分に力のあるチームだ。単独チームで出場した国体は3位に入った。昨季は2年生主体のチームで、主軸である主将SO伊藤龍之介、FB青栁潤之介「之介コンビ」も健在である。FWにも力があり総合力の高いチームだけに、今季こそ頂点をうかがう。

常翔学園、京都成章、佐賀工業、流経大柏も優勝争いに絡めるか

 当然、他のBシード校にも力があり、主将SH田中景翔(3年)が引っ張る常翔学園、PRからNO8に転向した森山飛翔(3年)が中軸の京都成章、スピードスターWTB大和哲将(2年)のいる佐賀工業、NO8小澤天(3年)ら1年時から活躍する選手もいる流通経済大柏あたりも優勝争いに絡んでくると予想している。

 惜しくもノーシードとなったが力のあるチームも多い。フィジー人留学生と力のある日本人選手が揃い“史上最強”との呼び声高い大分東明(大分)、優勝経験のある国学院久我山(東京第1)&目黒学院(東京第2)の東京勢、中国地方の「2強」石見智翠館(島根)&尾道(広島)、四国王者・松山聖陵(愛媛)、東北王者・秋田工業(秋田)なども実力校だ。

 また立命館慶祥(南北海道)は51校中、唯一の嬉しい初出場校となり、初戦で石見智翠館に挑む。加治木工業(鹿児島)は44大会ぶり4回目、勿来工業(福島)は25大会ぶり6回目の出場となった。
 
 12月3日に行われた組み合わせ抽選で、Aシード報徳学園は国学院久我山と同じ山、同じくAシード東福岡は松山聖陵、秋田工業と同じ山に入ったものの、よほどのことがない限りベスト8まで駒を進めるはずだ。またBシード11校の中で、3回戦でBシード同士の対戦がないチームは天理となったが、同じ山にノーシードながら強豪校の1つである石見智翠館が入った。

シード校が順当に勝ち上がるか、「シードバック」が起きるのか

連覇を目指す東海大大阪仰星は、組み合わせ抽選の結果「死の組」に。大会序盤から楽しみなカードが実現しそうだ 【斉藤健仁】

 トーナメントの組み合わせが決まり、特に高校ラグビーファンの注目を浴びたのは、東海大大阪仰星と国学院栃木の昨季のファイナリスト2校が同じ山に入ったことだ。しかも、東海大大阪仰星のすぐ横には大分東明も入り、いわゆる「死の組」となった。順当に行けば、東海大大阪仰星と国学院栃木は1月1日の3回戦で激突し、いずれかが大会から姿を消すことになる。
 中部大春日丘と佐賀工業、常翔学園と長崎北陽台、流通経済大柏と京都成章、大阪桐蔭と東海大相模とBシード校が同じ山となり、順当に勝ち進めば1月1日の元日に激突する。

 大会序盤はシード校が順当に勝ち進むか、それともノーシード校がシード校を破る「シードバック」が起きるかに注目してほしい。毎年、シードバックは起きない年もあるが、あっても1回、多くて2回ほどだ。ノーシード校も虎視眈々とシード校を下していわゆる“正月越え”を狙っている。そして、準々決勝、準決勝は抽選によって対戦カードが決まるため、最後まで優勝争いの行方には目が離せない。

優勝旗「飛球の旗」を手にするのはどのチームになるのか

「花園から世界へ」という大会のスローガンの通り、ラグビーワールドカップや五輪に出場した日本代表選手の多くが、高校時代に花園に出場しており、その経験を糧に大きく成長を遂げた。

 すでに大阪朝鮮高出身のSO李承信(神戸スティーラーズ)、流通経済大学柏出身のLOディアンズ・ワーナー(ブレイブルーパス東京)が日本代表で活躍しているように、今大会からも近い将来に桜のジャージーを身にまとい、世界と戦う選手が出てくるはずだ。

 ここ3年間、コロナ禍で部活動の実施が難しい状況でも創意工夫をして、ラグビーに打ち込んできたはずだ。また、花園は負けたら終わりのノックアウト方式の大会でもある。高校生ラガーマンたちが3年間のすべてを出し切る熱さがあるからこそ、見ているものの心を打つ。

 102回目の花園で優勝旗「飛球の旗」を手にするのはどのチームのキャプテンとなるか。今季の花園も1回戦から決勝まで目の離せない大会となろう。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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