「ハコ」はコンパクトでもインパクトは「ビッグ」  群馬クレインサンダーズが新アリーナで「非日常感」を演出

永塚和志

群馬クレインサンダーズが新アリーナで「非日常感」を演出

吉田GMは「アリーナに一歩入った瞬間の高揚感を作りたい」と話す 【永塚和志】

 筆者は様々なBリーグ等のバスケットボールの試合に取材で足を運ぶが、いる場所によって音がうるさすぎる、スピーカーの音が割れている、アリーナDJなどのアナウンスの声が聞こえないといった、音響面での課題を感じてきた。

 横瀬氏は、新アリーナプロジェクトでは音響のコンサルタントにも入ってもらっていると話した。音響のシミュレーションをするにしても、観客の有無で響き等が変わってくる可能性はあるとしたが、上に記したような課題はかなり解消され、ファンは音響面でも心地よさを感じることができるのではないか。

「(感覚を言葉にするのは)難しいのですが、音楽ライブに行ったときのような、ちょっと胸に響くような感じになるかと思います。それなりの音圧がないと、響かないので。今回は、かなりの音圧のものを入れています」(横瀬氏)

 その他、客席の最前列からコートまでの距離がルール上認められているぎりぎりの2メートルであることや、VIPルームやラウンジを備えていることなど、プロスポーツを観戦することに特化した仕様となっている。

 総工費は約80億円(オープンハウスのグループ会社であるオープンハウス・ディベロップメントの太田市への企業版ふるさと納税約40億円が建設・運用に活用されている点も、注目されている)。円安などによる資材高騰の影響はあったそうだが、機能を落とさずにやりくりをしたという。

 21年に開場し、本格的バスケットボールアリーナとして注目を集める琉球ゴールデンキングスの本拠・沖縄アリーナや、今後、建設されるアリーナの多くが8千人程度(コンサート等の際には1万人程度になる)の収容人数に設定しているが、人口約22万人の太田市で「コンサートなどの余暇の用途で(イベントを)呼ぶにはちょっと難しい立地」(横瀬氏)で、行政等の財政的負担の軽減なども考慮に入れた結果、新アリーナはコンパクトな「ハコ」にすることとなった。

 とはいえ、バスケットボールファン、スポーツファンに与えるインパクトは大きなものとなりそうだ。

 Bリーグでは2026−27シーズンより事業拡大を主眼とした“将来構想”を開始するが、最上位の“新B1”のライセンス取得にはホーム平均観客動員4000人、年間売上高12億円といった基準がある(審査が3次にまで及んだ場合、前者は3000人となる)。

 クレインサンダーズが現状、主要なホームとしている太田市運動公園市民体育館のキャパシティが大きくないこともあって、今シーズンの同チームのホーム観客動員は2600人強(11月末の数字)となっている。が、「非日常感」を高密度で味わえる新アリーナが開場すれば、数字は劇的に上がり、また周辺地域の活性化に寄与するのではないか。

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著者プロフィール

茨城県生まれ、北海道育ち。英字紙「ジャパンタイムズ」元記者で、プロ野球やバスケットボール等を担当。現在はフリーランスライターとして活動。日本シリーズやWBC、バスケットボール世界選手権、NFL・スーパーボウルなどの取材経験がある

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