書籍連載:ヤニス~無一文からNBAの頂点へ~

トップカテゴリーのチームと初の契約、しかし...... ヤニス~無一文からNBAの頂点へ~

ダブドリ編集部
アプリ限定

当時の欧州トップレベルのシャリッチ(左)と比べてもヤニス(右)の方が上だと、サラゴサのGMヴィラルは話した 【Getty Images】

 スペインのアラゴン州北東部にあるサラゴサというチームが、ヤニスに興味を持った。サラゴサのスポーティングディレクターであり、実質チームのGMだったウィリー・ヴィラルが、2012年10月頃にヤニスの代理人たちとメールでやりとりを交わした。そしてヤニスのハイライト動画を見た。「動画の画質はかなり悪かった」とヴィラルは言う。しかし見れば見るほど、彼は興味をそそられた。「彼には他とは違う何かがある」、ヴィラルはそう感じた。

 ヤニスがわずか3度のドリブルでコートを駆け上がりダンクしたのを見たからかもしれない。あれだけの距離を、わずかな労力でカバーするのは彼にとってはとても簡単で、自然なことだった。ヴィラルは、17歳という年齢で206センチという身長を兼ね備えた、ヤニスのようなポテンシャルを持った選手を未だかつて見たことがなかった。

 ヴィラルは「出来るだけ早く」アテネに行き、ヤニスのワークアウトを見たいと代理人たちに伝えた。代理人たちからはヤニスが正式な書類を持っていないことを説明されたが、ヴィラルがその想いを変えることはなかった。

 1週間後、ヴィラルはゾグラフ入りした。ローポスト、ジャンプショット、ドリブルのワークアウトをヤニスと行なった。ヤニスが楽々とコーンの周りをドリブルするのを見ながら、ヴィラルはこれだけ背の高い選手が機敏に動いていることに驚いた。「すごかったよ。あんな選手を人生で一度も見たことがなかった」と、現在はスペインのラス・パルマスを本拠地とするハーバライフ・グラン・カナリアのGMを務めているヴィラルは話す。

 しかし、同時に疑問も湧きはじめた。これがジョークか何かなのではないのかと疑い始めたのだ。もしかしたらヤニスは、ネット動画などでドリブルの技を披露しているだけの選手で、5オン5でのバスケットボールはできないのかもしれない。本当に彼がバスケットボールを理解しているのか、身体のコントロールの仕方を知っているのか。もしかしたら、自分のヤニスに対する直感は間違っていたのかもしれない。
  • 前へ
  • 1
  • 2
  • 次へ

1/2ページ

著者プロフィール

異例の超ロングインタビューで選手や関係者の本音に迫るバスケ本シリーズ『ダブドリ』。「バスケで『より道』しませんか?」のキャッチコピー通り、プロからストリート、選手からコレクターまでバスケに関わる全ての人がインタビュー対象。TOKYO DIMEオーナーで現役Bリーガーの岡田優介氏による人生相談『ちょっと聞いてよ岡田先生』など、コラムも多数収載。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント