ヤニスはルーキーの仕事も率先して行なった。バトラーからはマウンテンデュー（※炭酸飲料）やマクドナルドの食事の買い出しを頼まれた。「彼に謙虚さを保たせるためにやったことなんだ」とバトラーは説明する。「でも彼は何も当たり前に与えられるものだと思っていなかったので、正直言ってその必要は無かったね」。彼は喜んで頼まれごとをこなした。練習前の午前6時半にダンキンドーナツに行くようにサンダーズから頼まれたり、リドナーからマフィンを頼まれたり、アウェイでチームメイトの部屋に洗濯物を届けることを、大切な仕事として喜んでやった。

　彼のメンターとなり始めていたバトラーは、ヤニスがしっかりと気を引き締めるように注視していた。ヤニスはギリシャ系米国人が多く集まったネッツ戦で活躍し、スタンディングオベーションを受けたことがあった。バトラーはルーキーのヤニスが、賞賛されたときにどう振る舞うかを確認した。「やっぱり、ルック（※ルーキーの意味）はちょっと悦に入り過ぎているな」とバトラーは思った。

　試合後、チームメイトたちはヤニスをナイトクラブへ連れて行った。ヤニスは自分の素晴らしいパフォーマンスを祝ってくれるのかと思っていたが、もうすぐやってくるバトラーの誕生日のお祝いだった。そしてバトラーが望むことは一つ、ルーキーをもっと謙虚にさせることだった。バトラーはヤニスにクラブにいる全員の前で30数回、バトラーの年の数だけ腕立て伏せをするように指示した。