連載小説:I’m BLUE -蒼きクレド-

[連載小説]I’m BLUE -蒼きクレド- 第3話「猛獣たちのキンダーガルテン」

木崎伸也 協力:F

【(C)ツジトモ】

「へぇー、インタレスティング。日本のチームってファイトしないって思ってたよ」
 振り返ると、すらりと背の高いサングラスをかけた男が立っていた。
 勝吉が叫ぶ。
「レオ! 成田空港から直接来たんだな」
 男が右手でサングラスを外して胸元にかけ、左手に持っていたエナジードリンクをあおる。
「12時間もステイしてると、体なまるじゃん? ホテルに行く前に軽くセッションしたくてさ」
 慈英が目を見開いてつぶやいた。
「あいつが松森虎の息子か……」
 松森レオ、17歳。
 元日本代表・虎の長男でイングランドで生まれ育ち、つい先日までU19イングランド代表でプレーしていたヨーロッパでも注目されているストライカーだ。レオという名前には百獣の王になって欲しいという父親の願いが込められているらしい。虎とライオン。二世選手特有の優雅さを漂わせつつ、目の奥に獰猛さが潜んでいた。
 胸ぐらを掴んだまま固まる2人に対して、レオが呼びかけた。
「レッツゴー・アウトサイド。その続き、ピッチでやろうぜ。バチバチやるのボクも大好きだから」
 緊張が一瞬緩み、勝吉が苦笑いした。
「レオは初招集なのに、すでに常連みたいだな」
「イングランドではU19だけでなく、シニアのトレーニングにも参加したしね。代表なんてどこもセイムでしょ」
 勝吉が3人に着替えを促す。
「仲良く頼むぜ、今日の参加者はこの3人だからさ。秋山監督が怒るからケガはすんなよ!」
 レオが「ガッチャ」(了解)と言いながらエナジードリンクを飲み干し、ゴミ箱に投げた。ドンピシャで収まる。
「パーフェクト!」
 日本代表は猛獣たちのキンダーガルテン(幼稚園)だ――。
 玉城はノイマンの言葉の真意をようやく理解した。

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著者プロフィール

1975年、東京都生まれ。金子達仁のスポーツライター塾を経て、2002年夏にオランダへ移住。03年から6年間、ドイツを拠点に欧州サッカーを取材した。現在は東京都在住。著書に『サッカーの見方は1日で変えられる』(東洋経済新報社)、『革命前夜』(風間八宏監督との共著、カンゼン)、『直撃 本田圭佑』(文藝春秋)など。17年4月に日本と海外をつなぐ新メディア「REALQ」(www.real-q.net)をスタートさせた。18年5月、「木崎f伸也」名義でサッカーW杯小説『アイム・ブルー』を連載。

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