ドラフトで指名され、NPBで活躍する独立リーグ出身選手の特徴とは?

データスタジアム金沢慧

独立リーグ出身の育成選手は「当たり」の可能性が高い

 NPBで十分な実績を残している角中と又吉は支配下でのドラフト指名だったが、独立リーグ出身者の多くを占める育成ドラフトでの指名選手にはどのような特徴があるのか。

【データスタジアム】

 育成選手はまず支配下登録されて一軍の試合に出場することが目標となるが、育成ドラフト時の出身区分別に一軍での試合出場経験をみると、独立リーグから育成選手として入団した91人の中で一軍出場割合が38.5%と、大学出身の選手と同等の高い数字となっている。

 育成選手は育成という名はつくものの、将来性を高く買われている場合は支配下で指名されるため、実際は毎年が勝負の「常に球団内で競い合い、選抜される対象」といえる。なおかつ、独立リーグ出身選手は入団時の平均年齢が大卒より1歳上であり、選抜対象となる時間的な猶予は高卒、大卒に比べて短いはず。入団時の平均年齢がさらに高い社会人等出身選手の一軍出場割合が20%であることを考えても、第一関門を突破する「当たり」の選手が多いとはいえそうだ。

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 では、育成ドラフトを経て活躍しているのはどのような選手だろうか。独立リーグ出身に限らず、過去全ての育成ドラフト出身選手の通算WARをみてみよう。

 まずは野手をみると、独立リーグ出身選手者はトップ10に内村、亀澤と和田康士朗(富山→ロッテ)の3名がランクイン。甲斐拓也(ソフトバンク)を除くといずれも走力か守備力に秀でた左打者、ないしは両打ちの打者であり、大まかに分類すると似た特徴の選手が並んでいる。

 スピードを売りにする選手の中でも牧原大成(ソフトバンク)、周東佑京(ソフトバンク)、松原聖弥(巨人)はいずれも近年打撃力が向上したことで起用の幅が広がったタイプであり、年間通して活躍する野手が少ない独立リーグ出身選手のためのヒントは彼らの取り組みにありそうだ。

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 一方で、育成ドラフト出身の投手の通算WARトップ10には独立リーグ出身者が入っていない。先の独立リーグ出身投手のWARランキングのうち、4位までは支配下でドラフト指名された投手だった。独立リーグ出身者は育成から一軍に上がる確率は高いのだが、まだ一軍で継続して成績を残している投手は少ない。

 その要因のひとつに、このランキングに入っている投手はすべて高卒もしくは大卒でドラフトされた選手であり、独立リーグ経由の平均的な投手に比べて若くしてNPB入りしたという特徴が挙げられる。

 例えば、先述した宮森は育成ドラフト組だが、高校→大学→独立リーグ→NPBという過程を経ており、本来ならドラフトの段階で即戦力として期待される年齢だ。

 高校から直接NPB入りしない場合、将来NPBを目指す選手にとっては独立リーグへ飛び込むよりも大学や社会人に進むルートが主流となっている。徐々に早期のNPB入りを狙って高卒で独立リーグに飛び込む選手も増えてはいるが、まだ社会人経由や大学卒業後、ないしは大学を中退して入る選手の方が多く、NPBのドラフトで指名される年齢も必然的に高くならざるを得ない。

 NPBを代表する投手が独立リーグから生まれるためには、高卒で大学や社会人に進むよりもNPBへの近道として選ばれるための環境づくりが必要といえる。

チーム数の拡大に合わせ、NPBで活躍する選手を増やせるか

 2022年はIPBL配下が4リーグとなり、チーム数も合計で18となった。IPBL所属以外の独立リーグも複数あり、来年はチーム数がさらに拡大する話も報道されている。リーグの拡大期に選手が高いレベルで切磋琢磨できる環境を継続的に作れるかどうか。独立リーグの関係者は日々試行錯誤を続けている状態だ。

 主にNPBを目指す選手の集まるプロリーグという性質がある以上、若く有望な選手が独立リーグを進路として選ぶようになるための特効薬は、独立リーグ出身の選手が数多くNPBで活躍することだろう。

 果たして今年の独立リーグには長くNPBで活躍できそうな逸材がいるのか。次回は今年のドラフト候補選手、独立リーググランドチャンピオンシップでの注目選手を紹介する。

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著者プロフィール

データスタジアム株式会社 フェロー 主にプロ野球各球団でのデータ活用のサポートやメディア出演多数。 NHK「ワールドスポーツMLB」、「球辞苑」やAbemaTVのプロ野球中継でデータ解説役として出演。

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