満足のいくテストの場となったパラグアイ戦 森保監督の評価を得た鎌田大地と伊藤洋輝

宇都宮徹壱

「欧州組+川崎フロンターレ」のスタメンに思うこと

試合後の会見に臨む森保監督。ゴールを決めた鎌田と初出場の伊藤には一定以上の評価を示した 【宇都宮徹壱】

「今日のゲームについては、結果がすべて物語っている。ほとんどの時間帯で日本がボールを支配し、ゲームを支配していた。われわれもいいプレスができた時間帯があり、1点を決めることもできたが、それ以外はほとんど何もさせてもらえなかった。経験があるキープレーヤーが、参加できなかったことも結果に影響した」

 パラグアイ代表のギジェルモ・バロスケロット監督は、日本に完敗した理由について、このように述べていた。前日会見でも監督は、コロナ対策の認識の違いから、主力選手が入国できなかったことを明らかにしている。どれほどの影響力を持つ選手かは分からないが、それでもこの日の結果が大きく変わることはなかっただろう。

 そんな中での日本の収穫は、リーグ戦で実績を残した選手にチャンスが与えられ、それぞれが課題を残しながらもアピールできたことだ。とりわけ、ポジションを変えながらフル出場した鎌田と伊藤に対して、指揮官は一定以上の評価を与えている。鎌田に関しては「ドイツでの厳しい経験から、ハードワークや献身的なプレーで攻撃をけん引してくれた」。伊藤に関しては「初招集の初出場で緊張もあったと思うが、ポテンシャルの高さを見せてくれた。今後もミスを恐れることなくチャレンジしてほしい」。

 W杯出場というプレッシャーから解放されたことで、この日の森保監督には積極的な選手起用が見られ、それぞれに求められるタスクも明確だった。本大会までのAマッチが限られており、本格的なテストができる数少ない機会だったという事情もある。それでも、アジア予選とは異なる指揮官の違った一面を見られたのもまた、間違いなく収穫であった。次のブラジル戦では「いつものメンバー」がピッチに並ぶことが予想されるが、それでも何かしらの変化が見られることを期待したい。

 最後に、オシムさんに関連した余談を。この試合のスタメンの所属クラブは「欧州組+川崎フロンターレ」であった。日本代表を欧州組が占めるようになって久しいが、今の代表に不可欠な戦力を輩出してきたのが川崎であることは、誰もが認める事実。たまたまではあるが、オシムさんが目指した「日本サッカーの日本化」のヒントが、この日のメンバー表から感じられた。賛否のある「ジャパンズ・ウェイ」。それでも、日本独自の育成をベースとした強化の方向性に関しては、順調に進んでいると見てよさそうだ。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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