エース絶不調もシダックス快進撃 都市対抗でも冴えた野村采配と気遣いとは
【写真は共同】
熱狂の東京ドーム
8月23日、野村シダックスが迎える都市対抗の初戦は、優勝候補の一角・トヨタ自動車との勝負だった。
プロ野球で一時代を築いた名将がアマチュア最高峰の座に挑む。しかも相手は厚い選手層を誇ることから「13番目のプロ」とも呼ばれる、日本屈指の名門企業である。ヤクルト時代の愛弟子・古田敦也を始め、中日のエースを務めた吉見一起、最近では2021年の東京五輪でルーキーながら侍ジャパンの守護神を担った栗林良吏らを輩出している。
詰めかけた観衆は4万2000人。関係者には「大入り袋」が配られた。プロ野球ならともかく、近年の社会人野球では異例の出来事だった。
シダックスは一塁側だった。生涯の宿敵・巨人の定位置となるベンチに野村は腰掛けた。セ・リーグのペナントレースはこの日の時点で、2位の巨人は首位・阪神に13・5ゲーム差をつけられ、独走を許していた。
「巨人が弱いから、一塁側は嫌やな。俺は縁起を担ぐ方だから」
座り慣れない、見慣れない視点を得意の毒ガスでそう表現した。
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