連載:センバツ2022「完全予習」

初の甲子園に挑む“怪物”佐々木麟太郎 花巻東の先輩・大谷翔平超えはもう目前だ

高橋昌江

左脛を疲労骨折しながら東北大会初優勝

父である佐々木洋監督(右)は、他校の野球部を勧めたこともあったというが、息子・麟太郎は花巻東のユニホームを着ること以外、考えられなかった 【写真は共同】

 誰よりも花巻東への思いは強い。

 2005年4月18日、花巻東・佐々木洋監督の長男として生を受け、勝海舟の幼名・通称から「麟太郎」と名付けられた。幼い頃からグラウンドを訪れ、試合も観戦。花巻東が甲子園に出場すれば、現地やテレビの前で声援を送り、先輩たちの雄姿を目に焼き付けると同時に、勝利の喜びも厳しさも幼心に刻み込んできた。

 大谷の父・徹さんが監督を務める金ヶ崎シニアは自宅から近く、中学時代はそこで腕を磨いた。高校は父から反対されるのを覚悟の上で、花巻東を志望。案の定、賛同は得られなかったが、「ここでやれないのなら、野球をやめる」とまで口にしたという。花巻東以外のユニホームを着ることは考えられなかったのだ。

 高校に入れば、親子は関係ない。監督と、一選手。だが、佐々木麟太郎はただの選手ではなかった。春の県大会で4本塁打を放つなど、父子鷹として以上の注目を集めるようになる。夏の岩手大会では5試合で2本塁打。準決勝でカーブを捉えた初回の一発は先制ソロとなり、チームを決勝に導くが、しかし盛岡大付との頂上決戦では最後の打者となり、甲子園にはたどり着けなかった。

 1年の春、夏の背番号は「17」。かつては菊池雄星(トロント・ブルージェイズ)、大谷らプロに進んだ先輩たちも背負った、花巻東の出世番号だ。それを“卒業”し、背番号「3」で臨んだ秋。県大会では3試合連続で放物線を描いた。準々決勝は先制2ラン、準決勝では5-5で迎えた8回、宮澤圭汰の2ランで勝ち越した直後に佐々木も2ランで続いて相手を突き放した。さらに、試合前のキャッチボールで右手薬指を負傷し(のちに骨折と判明)、割れた爪にテーピングを巻いて出場した決勝でも、3試合連続となる2ランを叩き込み、高校通算35号とした。

 岩手で4年ぶりに秋の頂点に立って迎えた東北大会では、初戦で左中間に本塁打。準決勝の試合中には左足の脛に痛みが走ったが、テーピングを巻き、鍼治療を受けて決勝も戦い抜いた。花巻東は決勝で福島の聖光学院を下し、悲願の秋季東北大会初優勝。新たな歴史を作ったが、この試合でも2点適時打を放った佐々木は大会後、疲労骨折していたことが判明する。

昨年12月の手術もプラスに作用して

明治神宮大会では準決勝の広陵戦で3ランを放つなど、衝撃的な全国デビュー。初めて挑む甲子園でも豪快な打撃で人々の度肝を抜くに違いない 【写真は共同】

 自身初の全国舞台でも実力を示した。東北大会から25日後に始まった明治神宮大会。8時32分にプレイボールがかかった国学院久我山との開幕戦、初回の第1打席だった。1ボールからの2球目、132キロの外角直球をライトスタンドに運んだ。全国デビューのファーストスイングで期待通り、いや、期待以上の結果を出す。まさに役者である。

 続く高知との2回戦は本塁打こそなかったが、5打数2安打1打点。準決勝の広陵戦は3点を追う8回に滞空時間の長い同点3ランを放つなど、4打数3安打5打点の活躍を披露する。試合には9対10で敗れたが、神宮の杜に強烈なインパクトを残した。

 シーズンを終えた昨年12月には、「胸郭出口症候群」の手術を受けている。中学時代から肩のだるさや詰まりを感じるようになったという。ピッチング中には指先に血が通いにくくなり、力が入らなくなった。打席では、カウントが長くなると血の巡りが悪くなり、腕に痺れや脱力感が出た。今後のことを考え、高校1年の冬のタイミングでメスを入れたのだ。

「胸郭出口症候群」は、鎖骨と第一肋骨の間の神経や血管が挟まれることで症状が出るケースが多いため、重症の場合は肋骨の一部を切る手術で改善が期待できる。こうした手術にはマイナスイメージを抱きがちだが、むしろ症状がなくなることで、これまで以上に打席で集中し、フルスイングできるに違いない。事実、センバツを前にした練習試合でも、彼は本塁打を重ねている。

 この1年、衝撃的なパフォーマンスで人々の度肝を抜いてきた佐々木麟太郎。唯一無二の存在感を放ち、初めて挑む甲子園でも、あっと驚くスイングを見せてくれることだろう。

(企画構成:YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1987年、宮城県若柳町(現栗原市)生まれ。中学から大学までソフトボール部に所属。東北地方のアマチュア野球を中心に取材し、ベースボール・マガジン社発刊誌や『野球太郎』、『ホームラン』などに寄稿している。

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