川除大輝の両親が明かす、名前に込めた思い 北京パラリンピック日本選手団旗手の素顔

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「クロスカントリースキーの若きエース」はどのようにして育ったのか。川除大輝の父・大輔さん(写真右)に話を伺った 【写真提供:川除家】

 2019年の世界選手権・距離男子立位ロング・クラシカル(20キロ)で優勝を飾り、わずか18歳にして世界の頂点に立ったクロスカントリースキーの川除大輝(日立ソリューションズ)。

 高校2年生の17歳で初出場した平昌パラリンピックから4年。本日開幕する北京パラリンピックでは日本選手団の旗手を務め、2度目の大舞台に挑む。そんな「クロスカントリースキーの若きエース」はどのようにして育ったのか。川除大輝の父・大輔さんに話を伺った。(取材日:2月20日)

末っ子、大輝はどのように生まれ育ったか?

川除家は父と母、姉2人と大輝(写真右)の5人家族。父・大輔さんと母・美奈子さん(写真左)は同じ富山市出身で、小・中学校も一緒の幼なじみ 【写真提供:川除家】

 SNS上で話題となった「世界一美しいスタバ」の店舗がある富山県富山市。北には豊富な魚介類が生息する富山湾、東には雄大な立山連峰がそびえ立つ、自然豊かな土地で川除大輝は生まれ育った。

 川除家は父と母、姉2人と大輝の5人家族。父・大輔さんと母・美奈子さんは同じ富山市出身で、小・中学校も一緒の幼なじみ。互いに惹かれ合った2人は1995年に結婚すると、3人の子宝に恵まれる。末っ子の大輝は両手両足の指が一部ない「先天性両上肢機能障害」を抱えて、01年2月21日に生を享けた。生まれつき障がいを持つ息子をどのように受け止め、向き合ってきたのか。大輔さんが明かす。

「最初は正直に言うと、『どうしてなんだろう』とかなりショックでしたし、一番は大輝に申し訳ないという気持ちが強かったですね。幸い(身体的障がい以外の)ほかの障がいはなく、成長するにつれてほかの子と変わらず、時間はかかるが何でもできたので、何か特別扱いしなくても大丈夫だなと思っていました」

 親が子供の可能性を狭めるのではなく、障がいの有無に関わらず何でもできるようになってほしい。「姉2人と同じように育てよう」と両親は早々に決断する。剣道有段者の大輔さんは、武道の心得でもある「挨拶(あいさつ)はきちんとする」「誰に対しても礼儀をしっかりと」この2つを徹底して教育した。

「障がいを抱えていましたが、早い段階から同い年の子供たちと一緒に行動しなければイジメに遭ってしまうんじゃないかなと思って、慣れさせるために2歳の時から保育所に入れました。勉強についてはほとんど口を出さなかったですが、人に対しての挨拶(あいさつ)や礼儀はしっかりしなさい、と口酸っぱく言ってきたつもりです」

父親譲りの負けず嫌いな性格

川除大輝がスキーと出会ったのは小学1年生のとき。いとこから地元の猿倉ジュニアスポーツクラブに誘われたことがきっかけだった 【写真提供:川除家】

 大輝がスキーと出会ったのは小学1年生のとき。いとこから地元の猿倉ジュニアスポーツクラブに誘われたことがきっかけだった。

「いとこが近所に住んでいて、もともとクロスカントリースキーをやっていました。猿倉ジュニアスポーツクラブでは、冬はクロスカントリースキーを中心に、夏は球技やランニングなど、スポーツ全般を行っていました。親としては軽い気持ちでしたが、本人は体を動かすことが好きだったみたいで、次第にクロスカントリースキーの世界にのめり込んでいきました」

 性格は父親譲りの負けず嫌い。末っ子という立場もあり、2人の姉とはケンカしては負け、そのたびに大泣きしていていたと大輔さんは明かす。

「小さい頃は感情を表に出して、よく泣いていましたね。鉄棒の逆上がりや自転車など、成功するまで何度も挑戦していました。他の人よりも絶対上手くなってやる、負けたくない、という気持ちは誰よりも強かったと思います」

 興味を持ったことは何でも後押しした。スポーツ以外ではそろばんを経験。水泳は保育所、サッカーは3年生からトライした。サッカーの試合では、対戦相手の選手から障がいについて心ない言葉を浴びせられ、涙することもあった。

「そのときは一目を憚(はばか)らず泣いていましたね。次回対戦する時があったら、『アイツには負けるなよ』と言葉をかけると頷(うなず)いていました。もしかしたらほかにも同じようなことがあるのかもしれませんが、これ以上私は聞いていないので、きっと友達や周囲の人たちに恵まれていたと思います。大輝の周りにはいつも笑顔が溢(あふ)れていますね。ニコニコとした人柄は、人を惹きつける力があると私は思っています」

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