藤沢のショットが冴えた逆境での米国戦 「カーリングの妙」を吉村紗也香が解説

竹田聡一郎

調子が上向きのロコ・ソラーレにはスイス戦も期待

チームとしてアイスが読めていた米国戦。自信を持って最終戦のスイス戦に臨めそうだ 【写真は共同】

――藤沢選手のショットが冴えている試合でした。作戦面ではいかがでしたか?

 結果論にはなってしまいますが、連敗した韓国戦や英国戦を含め、この日もピンチになる場面ではテイクを使う選択肢もあったと思います。おそらくJD(ジェームス・ダグラス・リンド)コーチを中心に、試合後のミーティングで「こんなチョイスもあったよ」という共有はされていると思います。

 ただ、それでもストーンを溜め、ハウスの中で勝負しているのは、ロコが「チームとしてしっかりアイスが読めている」という自信の表れとも解釈できます。実際に投げ勝っていますし、対戦相手の立場になってみれば、どんどんドローで攻めてくるチームには脅威を感じます。

――そのJDコーチが逃げ切りたい最終10エンドの吉田知那美選手の2投目の前、タイムアウトで登場しました。あのあたりはいかがでしたか?

 ハウス内に縦に並んだストーンをノーズ(芯)でたたいて自分たちのストーンを残すというプランがあったのですが、JDコーチがはっきりと「ノー」を言っていました。いつも冷静に「こういう考え方もあるよ」と提案がメインのコーチングをしていますが、JDコーチにしては珍しく熱くなっているなとも感じました。

 結局、3アップ(3点リード)ということもあり、コーナーに溜まったストーンをダブル。できなくても1つ出して中にロール(ストーンに当てて、投げたストーンも動かして目的の場所に止めるショット)すればOKというBプランを持って投げた吉田知那美選手の一投でハウス内の石も動き、勝負を決める藤沢選手のダブルテイクアウトにつながりました。

――最後の藤沢選手のダブルも、簡単ではなかったですよね?

 難しかったです。でもあれをしっかり決めるのが藤沢選手の強みですね。そして先攻ながら自分のショットで試合を終えるというのは、スキップとしてはすごく気持ちいいものなんです。吉田夕梨花選手もウィックを決め、鈴木選手はクリアリングでノーミス。吉田知那美がダブルとヒットロールでつないで、藤沢選手が難しいショットを決めて快心のフィニッシュ。スイス戦につながるいい最終エンドになったと思います。スイスは1次リーグで首位の強豪ですが、今のロコ・ソラーレなら十分に期待できるはずです。

吉村紗也香(よしむらさやか)

【写真提供:フォルティウス】

 1992年1月30日、北海道北見市常呂町出身。小学4年生からカーリングを始め、常呂高校時代から日本選手権の表彰台に立つなど世代を代表するカーラーに。札幌国際大学時代には日本ジュニア選手権で3連覇を達成し、2013年の世界ジュニア選手権では銅メダルに輝く。今季は日本代表としてパシフィック・アジア選手権に出場し、自身初の優勝を果たした。5月の日本選手権では連覇を目指す。趣味は香水やボディクリームなどの良い香り収集。

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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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