メダル届かずも初の決勝T進出 スマイルジャパンの挑戦は、4年後に続く

沢田聡子

本当に、メダルを目指せるチームに

大澤ちほはキャプテンとしてスマイルジャパンをベスト8まで導いた 【Photo by Elsa/Getty Images】

 メダルへの夢がついえたことで、ミックスゾーンでの選手の表情は硬かった。いつも気丈な主将の大澤ちほだが、言葉を詰まらせる場面もあった。

「本当に勝ちたかったという気持ちと、まだまだ試合がしたかったという思いと……でも本当に率直に、相手が強かったなという思いです」

――ベスト8まで来たという手応えより、やはり悔しさの方が強いのでしょうか

「そうですね、ここまで来たらベスト4、メダルというところまでいきたかったですし、いけると自信を持ってやってきていたので、やっぱり悔しい思いが大きいですね」

 大澤は2018年から3年の間、スウェーデンのトップリーグSDHLのルレオHFというチームでプレーしていた。その時の同僚が、試合後大澤に言葉をかけている。

「『日本はすごくいいチームだから、自分たちに誇りを持ってね』と、ルレオのチームメイトたちに声をかけてもらいました」

――8強に入ったことで、若い選手たちも勇気をもらった大会でした

「世界選手権から本当に若手の選手が活躍していて、自分たちのプレーを一試合一試合重ねるごとに自信になっていたと思いますし、このまま自信を持って4年間また積み重ねていかなくてはいけない」

 4年後について問われると、大澤は「まだ今は考えてないですね」と答えた。

「4年というのはやはり長いので、自分に可能性を見いだせることができたら考えたいなと思います」

 大澤は「すべての部分で、やはりフィンランドの方が長けている」とも口にした。

「攻撃面・守備の部分で、どのゾーンでもスマートで、常に私たちに隙を与えてくれないプレーだったので、本当に勝っていくチームなんだなというのを感じました」

 だが、日本も「すごく上を目指せるチームだったと思います」と大澤は言う。

「最後勝ち切れなかったですけど、大会通して思いや自分たちが積み重ねてきたものをしっかりと表現できた大会だったんじゃないかなと」

 優れた得点能力で日本を支え続けてきた39歳のベテラン・久保英恵は、この北京五輪を最後に現役を退くことを明らかにしている。

「チームはメダルを目指してきていたので、そこの点に関しては本当に悔しい部分はありますけど、ここまでこられたということは着実に力をつけてきていると思うので、次は本当にメダルをとれるチームになっていってほしい」

3大会に出場した39歳のベテラン・久保英恵は今大会での引退を表明している 【Photo by Sarah Stier/Getty Images】

――フィンランドとの差は、どこに感じましたか

「やはり、しっかりチャンスを決め切れているところですかね。私たちもチャンスがなかったわけではないので、そこを決めていればもっと対等に試合が進んでいたのかなと思います」

 氷上のスナイパーとも称された久保は、この日唯一ゴールを決めた志賀に、今後の日本をけん引する期待をかける。

「志賀選手、紅音がこれからもっともっとやっていってほしいなと思いますし、他の選手もそれに続いて、もっともっとさらに強いチームになるように、もっともっと頑張ってほしいなと」

 完全燃焼はできたのかと問われ、久保は「うーん、なかなか難しいですけど」と考える様子をみせた。

「そうですね、このオリンピックは、本当に今はもう“終わったな”という気持ちしかないですね。もうちょっと貢献できれば良かったなというふうには思います」

――ご自身のキャリアでホッケー界に何かを残せたという思いはありますか

「(日本代表が)オリンピックに出ていない頃からやってきたので、本当にこういうふうにオリンピックに出ることができたことが、そして続けてオリンピックに出場できたことが、これからのアイスホッケー界にとってはすごくいいことだったと思う。着実に結果を残してきていると思うので、次は本当にメダルを目指せるチームを作ってもらえるように、頑張ってほしい」

――三大会出てきた五輪っていうのは、久保さんにとってどんな存在でしたか

「大会ごとに、新たに目標を作らせてもらえるオリンピックだったと思います。ソチの時は本当に何もできずに終わった大会だったので『次は本当に勝ちたい、上位にいきたい』という気持ちがあった。今回は違う立場、違う起用の仕方で臨みましたけど、着実に決勝トーナメントまでいけましたし、次は本当にメダルを目指せるチームになっていってくれると思うので、そこは期待したいなと思います」

 スマイルジャパンにとり、メダルには届かなかったものの、表彰台までの距離を確実に縮めた北京五輪だったといえるだろう。久保が繰り返し口にした「メダルを目指せるチーム」という目標が達成された時、日本のアイスホッケーはまた一つ前に進めるはずだ。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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