“未知への挑戦”が平野歩夢を金メダルに導く 東京五輪の経験によって「全てで強くなれた」
チャレンジの連続だった4年間がもたらした変化
スケートボードに取り組んだことにより、足裏の感覚が強化されたことも今回のパフォーマンスにつながった 【Photo by Jamie Squire/Getty Images】
村上コーチが「大きかった」と語るのは1月下旬のX Games終了後、8日間にわたって行った米国コロラド州・カッパーマウンテンのトレーニングだった。X Gamesでジェームズに次ぐ銀メダルに終わった歩夢はここから猛特訓。「1日50本とか60本とかかなりの練習をしてきたことで、たぶん3本ともメイクできたのかな、練習のおかげかな」と本人も振り返るように、マットとハーフパイプの両方で数多くのトレーニングを積み、トリプルコーク1440の着地を徹底的に繰り返した。
だが、今回の金メダル獲得の原動力になったのは練習量だけではなかった。スケートボードとスノーボードの両立という、未知の挑戦に挑んだことも含めて、チャレンジの連続だった4年間を過ごしたことが、歩夢の内面に大きな変化をもたらした。
「(いろいろな)チャレンジをしてきて、自分の中でも分からないような気持ちというのをいろいろ経験してきたことが、メンタルも含めて、何も怖いものがないという強さに変わっていきました。生活だったり普段やらないことをやってきた時間が今回は多かったので、そうした体験が練習にも生きました。全てを含めて自分が強くなれたんじゃないかなと思います」
スーパースターのホワイトも「マジでいい滑りだった」と賛辞
この五輪を最後に引退を表明しているショーン・ホワイトも「マジでいい滑りだった」と賛辞を惜しまなかった 【Photo by Christophe Pallot/Agence Zoom/Getty Images】
ホワイトの最後の試合で五輪王者となった歩夢は、競技終了直後にがっちりと抱擁。「マジでいい滑りだった」と賛辞を送られたことを明かした上で、このようにスーパースターへの思いを明かした。
「結果どうこうじゃないというのが、ショーン(ホワイト)と僕の中ではうっすらとつながっている部分なのかな。毎回会うたびに声かけてくれるし、自分にできない経験をショーンはしているので、そういう背中はリスペクトしています」
ホワイトから五輪王者の座を受け継ぎ、今後については「どういう道を進んで行くか、しっかり考えなおして進んでいきたい」と多くを語らなかった。どのような選択をするかはまだ分からないが、偉大なスターの後継者として、平野歩夢は世界からますます注目される存在になりそうだ。
(取材・文:石橋達之/スポーツナビ)