妻や浦和スタッフの言葉で現役続行を決意 漢・槙野智章が新天地・神戸で目指すもの
彼を育てるのも僕の仕事
槙野が「自分に似ている」と語る菊池。魂と気合のこもったプレーで見る者を熱くさせるセンターバックだ 【(c)J.LEAGUE】
いや、新しいチームに加入するのは、いくつになっても不安なものですよ。自分が行って本当に大丈夫かなって。でもね、その不安は1日で解消されました(笑)。
――さすがですね(笑)
温かく迎え入れてくれましたから。加入前に神戸のフロントの方々とメッセージのやり取りを頻繁にしていて、受け入れ態勢を整えてくれたので、ありがたかったです。神戸の若い選手たちもウェルカムな状態で、僕をイジってくれますし、グイグイ来てくれるので、すごくやりやすい雰囲気です。
――若手と言えば、加入会見でも名前を挙げていた菊池流帆選手は、一緒にプレーしてみていかがでしょう? 若い頃の自分を見るようですか?
たしかに、性格は似てるかもしれないですね(笑)。プレーも似てるし、苦手とする部分も似てる(苦笑)。だから、ふたりで支え合っていければ、面白いコンビになるんじゃないかと。彼がさらに殻を破るために、僕を踏み台にしてくれればいいし、僕に伝えられることがあれば、どんどんアドバイスを送っていくつもりです。ただ、僕にとって身近なライバルとも思っています。
――似ているがゆえに、ライバルになり得ると
菊池選手は、お金を払って観に行きたい選手のひとりだと思うんですよね。DFとして足りない部分もありますけれど、潜在能力は代表レベルだと思うので、なんとか代表になってほしい。彼を育てるのも僕の仕事だと思っているし、彼に限らず、山川(哲史)選手、小林(友希)選手もすごくいい選手なので、自分も負けられないという気持ちでいっぱいですよ。
――アンドレス・イニエスタ、セルジ・サンペール、ボージャン・クルキッチといったスペインの一流選手たちとプレーしてみて、どんな感想を抱いていますか?
本当に「うまい」のひと言ですよね。対戦したときより、一緒にやってみて、ポジティブな要素がたくさん見えました。学びたい、教えてほしいという気持ちはあるんですけれど、なんでそこが見えているのか、なんでそこにパスを出せるのか……どうやってそれができるのか分からないレベル(苦笑)。
DFとしては、パスの逃げどころが3つもあるのは大きい。特にアンドレスはポジショニングやパスの精度も素晴らしいのに、ドリブルでも剥がせますからね。うまい、すごい、やばい……褒め言葉が見当たらないです(笑)。
――ワールドクラスの選手たちがいて、ロシア・ワールドカップに出場した日本代表選手が5人いて、未来の日本代表候補たちもいる。戦力は充実していますね
ワクワクするでしょ? 本当に楽しみです。シーズンオフにも、いろいろな人から『今年の神戸は面白そうだね』って言われて、すごく嬉しかった。このクラブに決めて良かったと思うし、開幕が楽しみで仕方がない。『神戸、去年よりもさらに良くなっているね』と言われるような内容と結果を出していきたいと思っています。
いや、泣かない、泣かない
「若い選手たちに衰えた姿なんて見せたくない」と槙野。先頭に立ってチームを引っ張っていく覚悟だ 【(C)VISSEL KOBE】
選手の一人ひとりのクオリティが高くて、ひとりでいろいろなポジションをこなせるユーティリティ性のある選手が多いですね。今おっしゃられた通り、試合中にポジションやシステムを変えられるのが神戸の強みのひとつ。
戦術的なことはあまり言えないですけれど、トレーニングも非常に濃いんです。練習中に出てきた課題や成果をすぐにフィードバックして僕らに落とし込んでくれる環境が整っているし、ダラダラやるのではなく、ひとコマ、ひとコマ、集中して進めていき、練習の強度もかなり高い。非常にいいトレーニングが積めていると感じています。
――今年35歳になりますが、もう35歳なのか、まだ35歳なのか
どうですかね(笑)。ただ、神戸の若い選手たちから『小学生の頃、槙野くんのあのゴールを見ました』とか、北本久仁衛コーチから『槙野とは現役時代、バチバチやったよな』なんて言われたりすると、『俺も年を取ったな』って(笑)。ただ、若い選手たちに衰えた姿なんて見せたくないから、今も元気良く、若手の気持ちでやっています。誰にも負けないくらい声を出しているし、体も張っているし、走りのトレーニングでも先頭を切ってやらなきゃいけないなって、頑張っていますよ(笑)。
――以前、「現役の最後はFWをやりたい」と話していましたが、そうした気持ちは今もありますか?
ここで「FWをやりたい」と答えたら、『槙野FW志願』って書くんでしょ(笑)。もちろん、点は取りたいですよ。でも、それはDFとしての仕事を全うしたうえでのこと。三浦監督からは守備面を高く評価してもらっていますので、まずはゴールを守る、失点数を減らすことに集中したいと思っています。セットプレーではもちろん狙っていきますけれどね。
――浦和もリーグ優勝、ACL優勝を目指しています。想像してみてください。ACL準決勝の舞台で浦和と対戦することを
やりたいですねえ。アジアの舞台で対決したいですよ。痺れるでしょうね。
――埼スタに乗り込んだら、泣いてしまうのでは?
いや、泣かない、泣かない(笑)。僕はもうヴィッセル神戸の選手だから。神戸のユニホームを着てピッチに立つ姿を、早くファン・サポーターに見せたいんですよ。
――同じ赤系だから、似合っていると思いました
意外としっくりきてるでしょ? 練習着もそんなに違和感がないんですよ。ただ、14番はまだ自分でもしっくりきてないです(笑)。
――改めて今シーズン、どんなシーズンにしたいですか?
僕がこのチームに来た意味を、もう一度しっかり理解しなきゃいけないと思っています。昨シーズン、神戸はクラブ史上最高の3位でしたけれど、それで満足していいクラブじゃない。リーグ優勝をするには、やらなきゃいけないことがたくさんある。ピッチ上で違いを見せないといけないし、先頭に立ってチームを引っ張っていく役割が僕にはあると思っていますので、チームメイト、ファン・サポーターを巻き込んで、神戸からサッカー界を盛り上げていきたいですね。
(企画構成:YOJI-GEN)