“読みと度胸”が試される柳田悠岐の攻略法 アナリストが導いた紙一重の配球とは?
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2012〜21年パ・リーグ:OPSランキング
総合的な打撃力を表すOPSを見ても、柳田は1.000超えを4度も記録するなど、15年から20年にかけて規定打席に到達したすべてのシーズンでリーグトップの数字を残してきた。パ・リーグではここ10年で1.000を超えた選手はほかにいないだけに、柳田がいかに突出した存在だったかがわかる。昨季こそオリックス・吉田正にトップの座を譲ったが、それでもリーグ3位の.929と球界を代表する強打者であることに疑いの余地はない。
では、ここからはそんな柳田をどのように攻略するのか考えていきたい。そのヒントとなるのが、インコースだ。
2021年:内角投球数別の打撃成績
そして柳田を打ち取る確率を上げるためには、もうひとつ押さえておきたいポイントがある。それが内角は1球だけでなく、2球以上見せることでその効果がより大きくなるという点だ。1球だけの場合でも打率.269と成績を落としているが、2球以上の場合は打率.214とさらにその数字が下がる。またバットに当たる確率も悪化する傾向にあり、結果として打席数に占める三振の割合は29.6%まで上昇。打撃の確実性も欠く結果となっていた。
しかしインコースに弱点があると分かってはいても、カウントによってキャッチャーが要求しづらい場面もあれば、内角を見せる前に決着をつけられてしまう場面もあるだろう。バッテリーとしては、そのような展開になってしまう前に1球でも内角を見せておきたいところだ。
2021年:内角・高低別コンタクト率
そこで狙い目となるのがインローだ。もともとどの打者も空振りが多くなりやすいゾーンではあるが、特に柳田はコンタクト率が両リーグの規定打席到達者で唯一50%を切っており、スイングをしても2回に1回は空振りしていることになる。内角を意識させる上で必ずしもストライクを取る必要はないが、見逃しや空振りによってカウントでも優位な状況を生み出せれば、それはバッテリーにとって理想的な展開といえるだろう。
また、バットに当てられた場合にどうなるのかも触れておこう。打者の長打力を測る指標として、長打率から打率を引いたISOがある。柳田のISOをゾーン別に見てみると、インハイの.224に対してインローは.070。規格外のパワーを誇る柳田だが、インローはほとんど長打にできていないのだ。バットに当てられる可能性が低く、前に飛ばされても長打になりにくいこのゾーンは、インコースを見せる、あるいはインコースで勝負するという際に優先度の高い選択肢となるはずだ。
その一方で、柳田にも常に相手チームからの厳しいマークを受けながら結果を残してきた実績がある。それは自らの弱点や相手の攻め方を理解した上で、それを克服してきた証しだろう。今季の柳田は相手バッテリーの配球に対してどのようなアプローチを見せるのか。打席に立った際にはインコースを巡る攻防に注目してほしい。
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