王道歩む鹿島の戦術、強みは凡事徹底【未来へのキセキ-EPISODE 4】
この先の30年もまた、慌てず、騒がず、粛々と
00年代半ばまでは中盤の攻撃的なポジション、07年夏以降はボランチでチームをけん引した小笠原満男(中央) 【(c)J.LEAGUE】
大外から切り崩す仕事を一手に担った両サイドバックもそうだ。右は名良橋晃から内田篤人、西大伍へ。左は相馬直樹から新井場徹、山本脩斗へ引き継がれている。また、中盤の左右には創造性や突破力を売りモノにする才人たちがそろい、レオナルドと増田忠俊、ビスマルクと小笠原満男、さらに本山雅志と野沢拓也を経て、遠藤康と柴崎岳が柱石となった。
点取り屋とポストマンを巧みに組み合わせた2トップも例外ではない。前者は主にアルシンド、マジーニョ、マルキーニョスらブラジル勢に託され、後者は柳沢敦、興梠慎三、大迫勇也らの逸材が担ってきた。
攻守の要となるドイス・ボランチには狩人と司令塔が並び立ってきた。前者は本田から熊谷浩二、青木剛らを経て永木亮太や三竿健斗へ。後者はジョルジーニョから中田浩二、07年夏にイタリアから帰国した小笠原へと受け継がれた。それぞれの役どころに合致する人材を探し、引き入れ、育ててきた証と言っていい。
ただ、この10年でリーグ優勝は一度。今の鹿島は過渡期にあるかもしれない。モダンフットボールの仕様が大きく変わってきたからだ。各々が自在に立ち位置を変えながら、敵陣深くボールを運んでいくポジショナルプレーの実装に伴い、各ポジションに求められる仕事も従来のそれとは違ってきている。
これが次代のオーソドックスなスタイルなら、あとは採り込むだけだろう。奇をてらわず、王道を歩んできたのが鹿島である。慌てず、騒がず、粛々と。次の30年もまた、正統派のフットボールを演じているはずだ。