衝撃移籍のライアン・ロシターに聞く 「最後はチームとして戦うところが勝つ」

優勝するにはハードワークとケミストリーが必要

かつてのライバルチームで、ケミストリーの構築に着手する 【©ALVARK TOKYO】

 かくして、ロシターはアルバルクの選手となった。

 アルバルクはこのオフ、大型補強を施した。ロシターをはじめ、昨季のポストシーズンMVPのPF/Cセバスチャン・サイズが千葉から、東京オリンピック日本代表候補のSG安藤周人を獲得した。本来ならばヨーロッパで個人賞も受賞する活躍をしてきたPGジョーダン・セオドアが加わるはずだったが、メディカルチェックを通らず、破断に。しかし代わって前レバンガ北海道のジョーダン・テイラーと契約し、内外でタレントをそろえることに成功した。

 アルバルクには今季5年目のCアレックス・カークがいる。カークは昨季、腰椎椎間板外側ヘルニアを発症し、手術に及んでいる。故障者リストから抹消されたのが9月の半ばであったため、試合に出始めるまでには時間がかかることが予想される。

 このリーグ屈指のビッグマンに、ロシターとサイズが加わることでリーグ最上級のインサイドを形成することになる。さらに言えば、ロシターは19年末に帰化を果たしており場合よってはカーク、サイズと同時にコートに立つ、いわゆるビッグラインアップも組めるというオプションも生まれる。

 またロシターはカーク、サイズと比べるとよりアウトサイドに位置を取ることが多く、バックコートからボールを素早くドリブルで運ぶ技量もあるため、今季チームが目指すトランジションスピードを早めるという点でも大きく寄与するはずだ。

「僕ら3人はそれぞれ異なる形でチームに貢献できるだろうし、今からそれが楽しみだよ」。ロシターは自身とカーク、サイズのトリオの印象について問われ、そう答えた。「アレックスはフィニッシュの力が高いしセバスチャンはエネルギーの塊だ。そして僕は彼らよりも少しペリメター付近でプレイする。だからわれわれはよくフィットできると思っているよ」。

 その一方で、ロシターは釘(くぎ)を刺した。力量のある選手を集めることがそのまま優勝への即効性を持つわけではない、と。

 ここ10年ほどだろうか。NBAではスーパースタークラスの選手が3人以上加わることでそのチームを「スーパーチーム」などと呼んでいる。例えばケビン・デュラントが加わったゴールデンステート・ウォリアーズやブルックリン・ネッツ、レブロン・ジェームズ在籍時のマイアミ・ヒート、今季、ラッセル・ウェストブルックら大物が複数加入するロサンゼルス・レイカーズなどがそれにあたる。

 ロシター、サイズ、安藤らの獲得で、あるいは人は今季のアルバルクを日本における「スーパーチーム」と呼ぶかもしれない。

 だがロシターは、事はそう容易ではないと言う。

「紙の上で見た時、確かにこのチームは強力なラインアップをそろえている。素晴らしい選手たちの集まりだ。だけどスーパーチームと言うけれど、ヒートだって昨シーズンのブルックリンだって周囲は簡単に優勝するんじゃないかと予想していたにもかかわらず、1年目で優勝はできなかった。優勝するにはハードワークとケミストリーが必要なんだ。他にも多くの強敵もいるし、最後はチームとして戦うところが勝つ。だからわれわれがすべきことは多いし、限られた時間でケミストリーを築かねばならない」

 永く強豪として知られ、Bリーグでは2017−18シーズンから連覇を果たしているが、昨シーズンは故障者が続出したことが影響し、ポストシーズン進出すら逃した。

 東京オリンピックの最終選考から外れたロシターは、兄のいるロサンゼルスへ行き「ボールにも触らない」2週間を過ごし、新天地での挑戦に気持ちを高ぶらせる。

 無論、冗談半分だが、長年、敵として時にはゴリゴリと体をぶつけ合ってきた者同士が今は味方になったという状況に、最初は慣れなかったという。

「僕が練習場に行くとアレックスが『なんだかこの状況がしっくりこないな』なんて言っていたけど、僕も同じだった。(田中)大貴なんかにも『俺たちは長年、敵としてやってきたのに今は同じチームだなんてね』と話したよ。だけど僕はこのチームではルーキーのようなもの。この場面で自分はどう相手を守ればいいんだ、といった具合で質問をよくしているよ」

 アルバルクの目標は、優勝だ。そしてロシター個人にとっても、見据えるのはそこでしかない。

 昨シーズンのロシターの個人スタッツを見ると、平均得点12.9、リバウンド7.6はNBL時代の2013−14シーズンから日本に来てから最も低い数字だった。しかし、だからどうだというのだ然とした声で彼はそこに歯牙にもかけない。

 彼に言わせれば、昨季のブレックスには新たにLJ・ピークやジョシュ・スコットが加わったといったこともあって自身は黒子に徹したし、ひとえにチームが試合に勝てばいいと思っていた。

 無論のこと、それは新天地のアルバルクでも変わらない。

「例えば(田中)大貴や(安藤)周人が1試合で25本のシュートを打って僕が5本しか打たない。あるいは僕がパス役に徹してアレックスやセバスチャンが同じように多くのシュートを放ったとしても、それで勝てるのならまったく構わない。僕にとっては勝つことが最も大事なことなんだ」

パス役に徹することができるのもロシターの強み 【©ALVARK TOKYO】

 アルバルクは今季、ブレックスとの対戦が4度あるが、古巣との対戦でもロシターのそうした姿勢は変わらない。

「ブレックスの人たちとは忘れられない良い関係を築いてきたけど、ティップオフとなればそこは関係ない。他のチームにするように、彼らに対してもトラップやブリッツをかけに行くよ」

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