東京パラをブラサカ界の“フランスW杯”に メダルならずも、代え難い大きな経験

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今回の経験を生かし、強豪国へと育っていくために

確実にレベルを上げてきた日本。初出場となったパラリンピックの経験を踏まえ、さらなるレベルアップを誓う(写真は高田監督) 【写真は共同】

 これから日本のブラインドサッカーが、世界の強豪と戦っていく中で何が必要になっていくのだろうか。「同じアジアの強豪中国を参考にするのか?」そう記者に問われると高田監督は即座に否定した。

「中国は9〜10歳からエリートを集めて、ずっと雑技のようにドリブルを教えるような環境から上がってきたチーム。日本は大人になってからサッカーを始めた選手も含めて作った代表チーム。同じようにマネをしてやっても難しい。ブラジルだったり、スペインだったり、アルゼンチンだったり、インテリジェンスのあるサッカーを参考にして、(その考えを)植え付けていく方法が僕は良いと思っています。僕はそれを選択しました」

 日本のブラインドサッカーを含め、大きく見るとパラスポーツ全体で、現状では中国と同じ政策をとることは難しい。しかし、他の強豪国のエッセンスを取り入れて、日本らしいブラインドサッカーを作り上げていくことはできるだろう。

 現時点でも戦えている部分は多くあり、10番を背負った川村怜は試合後に、「世界トップレベルの中国相手にゴール前まで侵入できたことは、次の世代に示せたかなと思います」と自分たちのプレーを振り返りつつ、将来日本代表を担う選手たちへのメッセージも残した。

 健常者のサッカーの話になるが、日本サッカー界は1998年フランスワールドカップ(W杯)に初出場した時から、確実にレベルを上げてきている。あの大会で日本は3連敗で終わったが、アルゼンチンを1点に抑え、3位に食い込んだクロアチアともいい勝負をし、3戦目のジャマイカ戦で歴史的な初ゴールも奪った。敗れはしたが、その経験があったからこそ、4年後の日韓W杯で初勝利とベスト16進出、さらには直近のロシアW杯での飛躍などにつながったことは間違いないだろう。

 フランスW杯がサッカー界のレガシーとなったように、今回の東京パラリンピックは日本のブラインドサッカー界のレガシーとなるのだろうか。それはまだ分からないが、この3試合でブラインドサッカー界は進歩し、注目度も上がったことに間違いはない。まだ5-6位決定戦が残っているので、そこでしっかり勝利し、初のパラリンピックを終えてほしい。

 そして、この大舞台を経験した盲目のサムライブルーたちには、大舞台でアジア王者の中国を倒し、世界の強豪と互角に戦う未来の日本ブラインドサッカー界が、すでに見えているのかもしれない。

(取材・文:細谷和憲/スポーツナビ)

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