大坂、錦織…それぞれの敗因と収穫 元プロ・森上亜希子が五輪テニスを総括

内田暁

全盛期を思わせた錦織のフォアハンドストローク

シングルス、ダブルスともにベスト8に入った錦織。メダルには手が届かなかったとはいえ、「すごく良いプレーをしていた」と森上さんは高く評価する 【写真は共同】

 その他の女子の日本勢では、土居美咲選手と日比野菜緒選手が、前回のリオデジャネイロ五輪に続き、2大会連続で出場したこと自体が素晴らしかった。

 2人とも東京で良い結果を出したいという思いが強かったので、結果には満足していないかもしれません。ただ、テニスは基本的に1年でランキングポイントが消えるので、ランキングを維持するだけでも本当に大変なこと。年々全体のレベルも上がる中で、成長していないと1年前と同じ場所にはいられないんです。ですから私は、五輪に二度出たことを自信にしてほしいし、今回の経験が今後のツアーでも必ず生きてくると信じています。

 男子では、単複でベスト8に入った錦織圭選手が、すごく良いプレーをしていました。特にシングルス1回戦のアンドレイ・ルブレフ戦は、完全に相手を圧倒。あの好調のルブレフが、どうしたら良いのか分からない感じでしたから。
 錦織選手の試合は、今回すべて現地で見ることができたのですが、特に良く見えたのが、フォアハンドのストローク。打った瞬間は、「あ、長くてアウトになるかな」と思ったボールが、ベースラインの直前でグイっと落ちるんです。

 それは錦織選手が一番勝っていた頃のショットでした。相手からするとアウトになると思うだろうし、コートサイドで見ていてもそうだったんですが、最後にグッと落ちる。ショットの感覚は、間違いなく良くなっているんだと思います。

 マクラクラン勉選手と組んだダブルスも、ものすごく良かったですね。これはダブルスの名手だったマックス・ミルヌイがコーチになったことが大きい。ボレーは確実に上達していますし、それはシングルスのプレーにも生きていると感じました。

 このプレーであれば、今後グランドスラムでの上位進出も十分にありえます。ただ今はランキングが下がっているので、シードがつかない。そうなると、今大会でもそうでしたが、ドローが厳しくなります。まずはシードがつくところにランキングを戻すことが重要でしょう。グランドスラムだと32シードなので、そこに入れば、また変わってくると思います。

(企画構成:YOJI-GEN)
森上亜希子(もりがみ・あきこ)
1980年1月12日生まれ、大阪府大阪市出身。7歳からテニスを始め、17歳の時にウインブルドンジュニアでベスト4入りを果たす。98年にプロ転向。2003年の全豪オープンでグランドスラム初出場、初勝利。04年のアテネ五輪では日本代表に選出される。07年のプラハオープンで念願のツアー初優勝。09年11月12日、全日本選手権の女子シングルス準々決勝を最後に引退。その後はテニスの普及や後進の育成に携わりながら、テレビ解説者、コメンテーターなど幅広いジャンルで活躍中だ。

2/2ページ

著者プロフィール

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント