すべて出し切るもメダルなしの瀬戸と萩野 競泳界の強化ポイントを岩崎恭子が解説

久下真以子

日本の課題は「スプリント力」と「育成」

女子200メートル平泳ぎで2分18秒台の壁を破ったタチアナ・シェーンメーカー(南アフリカ)。世界のレベルは上がり続けている 【Getty Images】

 入江選手も200メートル背泳ぎ決勝で7位と大健闘。「メダル争いができないレベルで申し訳ない」といった発言もしていましたが、五輪4大会出場してずっと決勝に残り続けていることはすごいことだと思いますし、キャプテンとしてふさわしい選手だと感じています。ただ、入江選手や瀬戸選手、萩野選手といった競泳界の「顔」をはじめとして、メダルの量産を期待していた方も多いのではないでしょうか。その3名の選手の泳ぎを振り返ってみても、決して悪い内容ではなかったと感じています。今回、競泳日本にメダルが少ないのには、大きく2つの要因があると思っています。

 1つは「スプリント力」です。今回、女子200メートル・400メートル個人メドレーで大橋悠依選手(イトマン東進)が2冠を達成し、男子200メートルバタフライでは本多灯(ATSC・YW)が銀メダルを獲得しました。しかし、振り返ってみると100メートルの種目では日本人選手が1人も決勝に残っていないのです。個人種目だけでなく7月29日の混合400メートルメドレーリレーでも、1人が100メートルずつ泳ぐ種目ですから、1人ひとりがタイムを出せれば決勝に残れていたはずでした。2000年シドニー五輪から2012年ロンドン五輪までずっと日本はメドレー種目でメダルを獲り続けてきた「得意分野」のはずですし、スプリント力が向上すれば、日本全体の競技力向上につながっていくと思います。

 2つ目は、「若手の育成」です。入江選手が31歳で日本のトップにいることは素晴らしいことなのですが、裏を返すと彼に代わるような選手があまり育っていないとも考えることができます。今大会、アメリカは10代の選手が多かったですし、特に印象的だったのはヨーロッパ勢の台頭です。ロンドン五輪をきっかけに強化してきた当時の小学生や中学生が、活躍しているのがこの東京五輪なんです。日本も東京五輪をきっかけに、若い選手が育っていってくれればと思いますね。

 女子200メートル平泳ぎ決勝では、タチアナ・シェーンメーカー(南アフリカ)が2分18秒95の世界新記録を樹立しました。私もかつて五輪でこの種目に出場したので、2分18秒台という記録には本当に驚かされました。そう考えるとどの国も強くなっていて、練習方法や情報を得やすい今の世の中だからこそ、良いものを取り入れて自分のものにできる選手が伸びていくのでしょうね。東京五輪では、いわゆる強豪国と呼ばれる国以外からも強い選手が多く出てきました。世界的にレベルが上がってきているということなので、日本も負けずに強い選手を育てられる環境を作れるといいですね。

岩崎恭子(いわさききょうこ)

【株式会社スポーツビズ】

1992年バルセロナ五輪200メートル平泳ぎ、競泳史上最年少14歳で金メダル獲得。名言として残るインタビューも相まって、一躍時の人となった。引退後は児童の指導法を学ぶために米国へ留学し、水泳・着衣泳のレッスンやイベント出演を通して水泳の楽しさを伝える活動をしている。

2/2ページ

著者プロフィール

大阪府出身。フリーアナウンサー、スポーツライター。四国放送アナウンサー、NHK高知・札幌キャスターを経て、フリーへ。2011年に番組でパラスポーツを取材したことがきっかけで、パラの道を志すように。キャッチコピーは「日本一パラを語れるアナウンサー」。現在はパラスポーツのほか、野球やサッカーなどスポーツを中心に活動中。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント