多田修平が9秒台4人に先着した勝因 日本短距離界の進化が生んだ明暗

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サニブラウン、桐生はピークを合わせられず

右アキレス腱に痛みを抱えていた桐生は、本来の力を発揮しきることができなかった 【北川外志廣】

 代表争いに落選したサニブラウンと桐生は、日本選手権にピークを合わせることができなかった。

 19年の世界陸上ドーハ大会以降、アメリカで練習に専念してきたサニブラウンは中々レースをこなすことができず、日本選手権前に100メートルを1本こなしたのみ。「やれることはやったと思いますが、自分の準備不足かなと思います。経験値的な体の慣れの差が出てしまいました」と、素直に敗戦を認めた。26日からは約2年ぶりとなる200メートルのレースも控えている。2度日本選手権で100メートル、200メートルの二冠を勝ち取った男が、どこまで状態を戻してくるのか注目したい。

 桐生は「代表権を獲得できなかった、というのが今日の結果かなと思います」と総括。決勝後は「足の痛みのことについてはお答えできない」と本人は言い訳にしなかったものの、前日から「歩くだけで痛い」と話していた右アキレス腱の痛みは、やはり大きな影響を与えた。平常時のような中盤以降の伸びやかな走りを見せられず、無念の5位。日本初の9秒台ランナーとなり、短距離界の顔として君臨し続けた25歳は「東京での五輪開催が決まってから、8年間ここを目指してきた。ここまでにいろいろあったことを思えば、ここでいったん一区切りかなと思います」と気持ちを整理した。

 3枠目の代表は内定こそ出ていないものの、標準参加記録を突破している中で4位に入った小池の選出が有力。リオデジャネイロ五輪以降、度重なる日本記録の更新ともに繰り広げられた代表権争いに決着がついた。9秒台ランナー2人の落選が決定的となったことが、この5年に起こった急激な日本短距離界の進化を物語っている。

 ただ、金メダル獲得を目指す4×100メートルリレーは「第105回日本選手権、参考競技会の成績を総合的に判断し、リレーの特性と戦略を考慮して選考」とされている。多田、山縣、小池の3人はもちろん、2位に食い込んだブルーノらも含めて、編成の議論が交わされる。リレーでの豊富な実績を考慮して、サニブラウンと桐生がメンバーに加わる可能性もあるはずだ。この日涙を飲んだ2人も含め、それぞれがどんな立場で五輪を迎えるのか、まだまだ目が離せない。

(取材・文:守田力/スポーツナビ)

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