ラ・リーガ39クラブ、ESL騒動に共同声明 フットボールに最も大切なものとは?
報道陣から最も多く出た質問は?
記者会見にはセビージャ、ベティス、バレンシア、レバンテ、ビジャレアルの5クラブ会長も出席。ESL構想に反対の声を上げた 【写真提供:La Liga】
テバス会長は「サッカー界に対してとても危険なアクションを起こしたことは事実だが、(ラ・リーガとしての)制裁は考えていない」とした上で、「UEFAについてもチャンピオンズリーグ(CL)から締め出すような制裁を下す可能性はないだろう」という否定的見解を示した。しかしながら、「CLへの参加はクラブの自由意志。毎年5月頃にUEFAに参加の意思表示をする必要があるが、今回ESL参加を表明したクラブが来季どうするのかは、その時間も迫っているので見てみようではないか」と皮肉も残した。
また、レアル・マドリーのペレス会長のみならず、ラ・リーガの会見直前にバルセロナのジョアン・ラポルタ会長が収益性を高めるためにもESL構想のようなリーグは「必要」との立場を表明したことから、会見ではコロナ禍でのラ・リーガの財政状況についての質問も相次いだ。ペレス会長が今回UEFAで承認されたCLの新フォーマットが始まる「2024-25シーズンまでわれわれが生き残れているか分からない」とクラブの財政危機を強く強調したことに対し、テバス会長は次のように述べた。
「彼が言うように2024年に向けてスペインのサッカーが破綻することはない。われわれは、この難局を乗り越えるべく必要な措置を講じてきた。コロナ禍でもスペインサッカー界は政府に救済を求めていないことを忘れてはならない。クラブは期限通りに税金の支払いを行い、支払い期限について選手との交渉はしたが、給与未払いや債務不履行は一切なかった。したがって、ペレス会長が言うように、状況は壊滅的ではないし、彼が言ったことは事実無根だ」
その後も会見ではESL構想発表直後、参加表明した12クラブで唯一メディアに登場したレアル・マドリーのペレス会長の発言を取り上げた質問が続いた。例えば、ペレス会長とバルセロナのピケが「レアル・マドリーやバルセロナのようなビッグクラブが大幅な減収を強いられている一方、ラ・リーガのスモールクラブが放映権料の恩恵を受けて収益を上げているのはおかしい」という意見を発した点についても聞かれた。
テバス会長は、「損失を生んだパンデミックという単一の問題を取り上げることはフェアではない」とした上で、「レアル・マドリーとバルセロナの歴史を見てみると、彼らは常に利益を上げている。レアル・マドリーは、ペレス会長体制下では一度も赤字決算がない。バルセロナもアトレティコもここ5、6年では赤字を計上していない。確かにコロナ禍の過去1年間だけを見ると赤字だろうが、スーパーリーグは『コロナ禍』だけではなく、永遠に続く」とコメントした。
ESL構想が反発を受けた最大の理由
終始テバス会長節の出る会見となったが、「欧州で確立しているサッカー界のエコシステムは、国内リーグでしっかりとシーズンの38節を戦い、そこで欧州への参加権を得るというもの。戦うことなく常に参加権が保証されるリーグなど成立しない」という意見は的を射たもので、今回のESL構想がこれだけ多くの反発を受けた最大の理由が、参加20チーム中15チームには常に出場権が保証されているというリーグの閉鎖性、競争性のなさだ。
レバンテのキコ・カタラン会長も欧州サッカーの現行のエコシステムについてこう述べた。
「誰もが知っていて、世界中で成功を収めているこのモデルから外れたルール下でのリーグは、連帯の原則を破壊する。レバンテのファンは、大きなスタジアムで、大きなクラブと一緒にヨーロッパの大会に出場することを夢見る権利がある。レアル・マドリーが今の地位を築くためには、他のクラブが必要だった。誰かがチャンピオンになるためには、他のチームの存在、他の選手たちのサポートが必要」
ESL構想側には「フットボールを救う」という大義名分や、スモールクラブやサッカーの普及のためのより大きな分配金の用意があったのかもしれないが、現状のエコシステムやUEFAの管轄を外れた形での強引な独立リーグ設立が周囲の合意を得られるはずもなければ、うまくいくはずもない。今回の騒動直後、ラ・リーガの会長たちが開いた会見からはその当たり前のファクト(事実)と同時に、48時間で頓挫した「欧州スーパーリーグ構想」の終焉(しゅうえん)を再確認した。