アーチェリー代表がメダル射止める 未来を切り拓くため、精鋭6人が五輪へ

平野貴也

大黒柱は古川、若手は中学時代からのライバル

第1日、最終日ともにトップの成績を残した河田 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 東京五輪の競技会場でもある夢の島公園アーチェリー場で、タフな戦いに生き残った男女各3名は、大舞台でメダルを狙う。5大会連続の五輪出場となる日本は、開催国枠で男女3名ずつの出場枠を確保。東京五輪では、開会式が行われる7月23日から31日にかけて競技が行われ、混合団体、男女団体、男女個人の順に3種目が実施される。

 個人種目での活躍はもちろんのこと、混合や団体でも活躍が期待される。最初に行われる混合団体は、男女1名ずつがペアになって行う新種目。2018年のアジア大会では、古川が杉本智美(ミキハウス)とのペアで優勝しており、日本勢もメダル候補に入る。団体戦は、女子が2012年のロンドン五輪で銅メダルを獲得。当時のメンバーでもある早川は、2度目のメダル獲得を狙う。

 男子の3人では、2012年ロンドン五輪の個人戦で銀メダルを獲得した実績を持つ古川が大黒柱。36歳になったが、力の低下は感じていない。むしろ「高い点数を出せるようになったし、安定度も増している。年を重ねて自分の骨格やフォームに対する理解が深まって、修正の仕方が分かって安定してきた」とたくましい。団体戦に関しては「(河田と武藤は)何回もナショナルに入っているし、一緒に遠征にも行っている子たち。どういう性格、スタイルかは理解しているつもり。団体戦での順番も何となく決まっている。あらためて考え直す必要がない。良いチームになったと思う」と本番での戦いをイメージしていた。

 社会人2年目の河田と武藤は、ともに1997年6月生まれで中学時代から競い合ってきた仲。河田が「彼は、中学からライバルだと思いながら戦ってきた選手の一人。五輪という舞台に一緒に出られるのは、本当にうれしい。同じチームで同じ目標に向かって、これから切磋琢磨していけたらと思う」と言えば、武藤も「間違いなく、彼がいなかったら、僕はアーチェリーを頑張っていなかったと思う。大学の頃だったと思うけど、半分冗談みたいな感じで『東京五輪、一緒に出られるといいね』と話していたことが実現すると思っていなくて、うれしいし、彼に感謝しかない。河田君の方が僕より良い成績を出していて、『こいつに勝ちたい』と思ってきたことが多く、それで成長できた。彼がいるからこそ、今、ここに僕がいると思う」と好敵手に感謝を示し、ともに大舞台に立てる喜びをかみ締めた。

メダル獲得で国内環境の改善へ

五輪代表に決まった(前列左から)男子の古川高晴、河田悠希、武藤弘樹、(後列左から)女子の中村美樹、早川漣、山内梓 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 女子の代表3人は、ベテラン、中堅、若手という構成になった。この大会を競技生活の集大成と捉えている早川は、一時は引退した理由でもある右肩痛が、今も抱える悩みどころ。最終選考会・最終日も肩の痛みで午前2時に起きてから、寝返りを打つことができず眠れなかったという。それでも雨の中で安定して点数を稼いだ実力は、確かなもの。33歳で迎える二度目の五輪挑戦は「ないと思っていた」と話す舞台だが「出るからにはメダルを取りたい」と意気込んだ。団体戦については「引っ張るというより、脱落者が出ないように、後ろから(仲間を)押していこうと思う」と、リーダーではなくサポート役を意識する。

 代わって、主軸の自覚を強めているのが、28歳の中村だ。出身地の山形県鶴岡市で活動。この2年間は、積雪の多い冬場に地元企業のサポートを受け、借りた工場の中に小さめの的を設置して練習に取り組んできた。団体戦に向けては「ポイントゲッターになりたい」と、チームのけん引役を担う心意気を示した。

 最年少の山内は、22歳の大学生。「フォームを固めて、タイミングなどでも、もっと安定感を出せるようにしたい。五輪に出るからには責任もある。メダル獲得に向けて一層頑張らないといけないという気持ちも強くなった。心強いお二方に引っ張ってもらう形になると思うけど、自分のリズムを崩さず、気持ちを強く持って打って行けたらと思う」と抱負を語った。

 男女各3人の6人で狙うのは、地元開催でのメダル獲得だ。それが、国内環境の改善につながると期待している部分もある。古川は「(伝達情報の多い)五輪でないと、日本の皆さんには伝わらないところもある。ロンドン五輪の時は、見ている方が緊張したと言われた。緊迫感を与えられる精神面の競技。そういう面白さを伝えられたらいいし、やってみる場所が増えると良い」と話し、早川も「早い年齢から競技を始められる環境になってきたが、大学卒業後に行く場所がないという状況がある。その環境を作っていけば日本はもっとうまくなる」と、競技環境増加のきっかけとなることへの期待を語った。

 次の世代のためにも、東京五輪の大舞台でメダルを射止める。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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