「4強」中心に回る箱根駅伝 優勝のためには前半型オーダーが必須?

加藤康博

補欠に入った有力選手はどうなる?

昨年は苦戦を強いられた東洋大・西山。ただ、1、2年時は1区区間賞を獲得している 【写真:アフロスポーツ】

 当日変更で大きくオーダーが変わりそうなだけに、現時点で展開の予想はしづらいが、今季は大学長距離界全体でレベルアップが進んでおり、気象条件に恵まれれば高速レースになることは間違いないだろう。

 1区はすでにエントリーされている順天堂大・三浦や創価大・福田悠一(4年)を中心にレースが進みそうだ。現状は補欠だが予選会日本人6位の中央大・吉居大和(1年)、過去に1区で2度区間賞を取っている東洋大・西山和弥(4年)らが入れば高速化の流れは加速する。

 現時点で2区に配されている選手では、10000mの持ちタイムで国士舘大のライモイ・ヴィンセント(3年)がトップ(27分39秒80)。駒澤大・田澤がそれに続く。田澤は今季、日本人学生に負けなしで、先の日本選手権でも実業団選手相手に終盤まで食らいついて見せた。駒澤大はここで一気に流れをつかみたいが、東海大・名取が勢いを止められるか。また早稲田大も上位進出のためには前半区間に戦力を入れるはず。中谷、井川も往路で起用され、流れをつかみにかかるだろう。

 また気になるのが、前回3区で従来の区間記録を2分1秒更新する59分25秒と驚異的な区間記録を樹立した東京国際大のイェゴン・ヴィンセント(2年)、さらに予選会トップ・拓殖大のジョセフ・ラジニ(2年)が補欠にいること。東京国際大はもうひとりの留学生、ルカ・ムセンビ(2年)が2区に入っており、そのまま走る可能性も残すが、この2名が走るとすればこの往路3区までが濃厚。レースを大きく動かす存在なだけに起用区間が気になるところだ。

 青山学院大は神林をどこで起用するか次第だが、3区終了時点で先頭に近い位置につけたいはず。もし前に出られるようであればこちらも一気に流れに乗る。5区で攻勢に出そうなのが宮下を擁する東洋大か。「4強」のうち青山学院大、東海大、明治大は経験者もおり、上位で戦える布陣。また駒澤大も新戦力を起用することになるが、ここでの戦いには自信がありそうだ。

東海大・両角監督「まずは往路優勝」

東海大の3本柱である名取(奥)は2区、西田(手前)は5区にエントリー。3人の出来がチームの命運を握りそうだ 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 選手層に厚みがある青山学院大、駒澤大、明治大、そして早稲田大は復路でも流れを作れる選手を残すが、後半区間で若干、後手を踏みそうなのが東海大。今年は選手層がやや薄く、両角速監督自身、「まずは往路優勝をしないことには」と前半勝負を公言している。東海大が往路をどの位置で終えるかは見どころのひとつになる。

 前回大会は青山学院大が往路優勝を果たし、そのまま逃げ切ったが、それ以前の2大会(第94、95回)は復路での逆転劇が起きている。その時はそれぞれトップと1分14秒差の2位で折り返した東海大、同じく36秒差で折り返した青山学院大が優勝した。戦力が拮抗(きっこう)している今大会だけに復路での逆転で優勝が決まる可能性もあるが、そのためにも往路で遅れを取らないことが何より重要だ。それはシード権争いも同じで、前回大会では往路を11位以下で折り返してシード権を獲得したのは東洋大のみ。どのチームも前半型のオーダーを組んできそうだ。

 前回は7区間で区間記録が更新されたが、今大会もハイレベルな戦いになることは間違いない。1区から激しい主導権争いが繰り広げられるだろう。

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著者プロフィール

スポーツライター。「スポーツの周辺にある物事や人」までを執筆対象としている。コピーライターとして広告作成やブランディングも手がける。著書に『消えたダービーマッチ』(コスミック出版)

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