今年度の選手権も1年生に逸材がそろう 必見の“スーパールーキー”3人とは
37年ぶりの1年生得点王が誕生するか
滞空時間の長いヘディングなど、抜群の身体能力を誇るのが、神村学園の福田だ。泥臭さも感じさせる1年生ストライカーが得点王に輝いたとしても、不思議はない 【吉田太郎】
鹿児島県予選では3回戦から決勝まで4戦連発。準々決勝の前半に頭部を負傷し、テーピングをぐるぐる巻きにしての試合が続いたが、傷をかばうことなく勇敢なプレーを続けた。そして、準々決勝と決勝では、負傷している頭でゴール。憧れの存在だという岡崎慎司(現・ウエスカ)のような泥臭さと得点嗅覚、さらには天性のバネも備えた逸材ストライカーが、選手権でゴールラッシュを見せたとしても不思議はない。
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鹿児島城西との県予選決勝では、クロスを頭で合わせて先制点をアシストすると、さらに身長190センチ超の巨漢GK、ヒル袈依廉に競り勝ってヘディングで追加点も決めている。その高さは圧倒的だ。
鋭いラインブレイクや、献身的なフォアチェックも魅力の福田は、こんなコメントを口にする“男気”の持ち主でもある。
「試合に出ていない3年生もいるので、その思いも背負いながら、命を懸けて戦いたいです」
一方で、シュート精度にはまだまだ改善の余地を残す。それでも、この1年は苦手だったクロスからのシュート練習を熱心にこなし、またU-16日本代表で指摘された臀部(でんぶ)強化、ボールを引き出す動きの質向上などにも精力的に取り組んでいる。
これまで年代別代表では、大迫に知名度・評価ともに先行されていたが、昨年、神村学園中や国体選抜で結果を残し、さらに今年の活躍もあって、今では肩を並べる存在になった。選手権では大迫のアシストからゴール連発もあり得るだろう。
「目標は得点王です」
そう言い切る福田。武田修宏氏(清水東出身)以来、37年ぶりとなる1年生での得点王獲得も、決して夢物語ではない。
J内定者4人を擁する昌平でレギュラー
須藤や小見らJクラブ内定者4人を擁し、優勝候補の一角に推される昌平で、堂々レギュラーを張る荒井。そのプレーからは1年生離れした重量感が伝わってくる 【吉田太郎】
神村学園の2人について水を向けると、そう言ってかぶりを振ったのが、昌平(埼玉)の1年生MF、荒井悠汰だ。
たしかに年代別代表歴はない荒井だが、鹿島アントラーズ内定のMF須藤直輝をはじめ、Jクラブ内定者4人を擁する昌平で、堂々レギュラーを張る。主にトップ下やサイドハーフを務め、そのプレーからは1年生離れした重量感が伝わってくる。上級生の激しい当たりにも負けない身体の強さと、系列のFC LAVIDA(昌平の下部組織という位置付け)時代から磨かれてきた技術力を兼備し、得意の左足で試合を決めることも少なくない。
実際、荒井が収まりどころや突破口となり、そこから相手を押し込んでいく展開も見られるほどだ。アベレージは高く、ときにJ内定組を凌駕(りょうが)するようなハイパフォーマンスを披露する。もちろん昌平の藤島崇之監督は、「フィジカルの使い方がうまい。ここからスピードも伸びてくるし、楽しみですね」と大きな期待を寄せている。
しかし本人は、現状に満足していない。「もっと結果を残さないとって、焦っています」というのは、おそらく本音だろう。
中学時代ならば自分で決めに行くようなシーンでも、昌平でキャプテンの須藤やFWの小見洋太(アルビレックス新潟内定)にパスを要求されると、「あの人たちに出せば、何か起こりそうなので出しちゃう」。
そして、慌ててパスを選択した結果、ミスとなって後悔することも少なくないという。自分自身に求めているのは、信じて仕掛ける勇気を持つこと、そしてプレーの意図をしっかりと先輩たちに伝えること。そのためには、今以上に努力して自信と周囲の信頼をつかまなければならないと考えている。
理想とするのは、ボールを持っただけで対戦相手に怖さを感じさせられる選手、横に逃げるのではなく、縦に仕掛けて嫌がられるような選手だ。前回大会で松木が見せたプレーと強靭(きょうじん)なメンタリティーにすごみを感じながらも、チームが勝つためには自分もその姿に近づかなければならないことを十分に理解している。
「日本一を狙っているので。初めての選手権ですが、悔いなくプレーしたいです」
寡黙だが、負けず嫌いな性格。1年生であってもチームで一番の活躍をするという強い気持ちをもって、荒井は大舞台に臨む。
今回の選手権では、他にも新潟県予選決勝で先制ゴールを決めた帝京長岡のMF廣井蘭人(U-15日本代表候補)や、同じく帝京長岡のスケールの大きなGK佐藤安悟、そして徳島市立(徳島)の守護神で、U-16日本代表候補の藤澤芭琉ら、楽しみなルーキーがめじろ押しだ。
青森山田のDF藤原優大(浦和レッズ内定)や松木、昌平の須藤、京都橘(京都)のFW西野太陽(徳島ヴォルティス内定)といった主役候補だけでなく、今大会では1年生たちの「初めての選手権」からも目が離せない。
(企画・構成:YOJI-GEN)