柴崎岳、スペイン挑戦と日本代表を語る 悲観せず、現実を受け止めて、日々成長を

工藤拓

守備のインテンシティー、デュエルは向上

柴崎はひとつひとつの質問に丁寧に答えてくれた。その言葉は示唆に富んでいる 【スポーツナビ】

――スペインに来てから最も伸びた部分は? 伸びしろはどこにあると感じていますか?

 伸びた部分は、自身の守備能力かなと思います。こっちに来てからの4年、守備のインテンシティー、1対1のデュエルはどのチームにいても求められることが多かったので。そこは4年間を通してできた部分かなと。伸びしろに関しては、これからもそうですけど、セントラルMFというポジションでやっていく以上、やはりチームをどういう形であれ勝たせられる、勝利に導いていける選手になっていくこと。そういう理想像を持っているので。これまでの4年を通して培った守備の向上、もともと持っている攻撃のクオリティーをさらに伸ばしていって、トータル的に見て、やはりチームに必要だなと思われる選手になっていけるように、これからもやっていきたいと思っています。

――スペイン語を習得する前と後で、プレーにどういった変化がありましたか?

 チームで求められていること、監督やコーチたちがチームに求めていること、もしくは個人的に求められていることを話してもらって、それを理解することはできます。加えて、自分の意見を織り交ぜながらのディスカッションを、いまは練習や試合後にしています。そういうことができるようになったので、スペイン語を話せたり、聞く力がつく前と後では、だいぶ違うかなと思います。

――これからスペインリーグを目指す選手へのアドバイスをお願いします。

 アドバイスというよりは、「こういった場所だ」とは言えるとは思います。もちろん1部も2部も非常に競争力が高いです。今自分が戦っているのは2部なので、その立場から言わせてもらうと、2部でしっかり結果を残して、力をつけて活躍できれば、十分に1部でも戦える能力を養えるところはあると思います。もしスペインにチャレンジする選手たちがいるのであれば、十分に可能性を感じられると思います。いきなり1部ではなくても、2部のチームで自分に興味を持ってくれたり、プレーする機会を与えてくれるチームがあれば、そこで力をつけて1部に上がっていくというキャリアを築いていくことも可能だと思います。

内田篤人さんの意見に概ね同意

厳しい環境に身を置くことで得られるものがある。柴崎は世界と日本の差を肌で感じ、成長の糧にしてきた 【Getty Images】

――スペインではどこも局面の力が求められると言っていました。日本代表でもそうした力を持っている選手が選ばれている印象があります。それは海外でプレーすることでより実感していますか?  日本にいても意識して改善できる部分なのでしょうか?

 個人的な意見で言うと、環境を変えるのが一番早いかなと思います。今はJリーグがどうかというのは、細かくは分からないですけど、自分が在籍しているときはそういった部分を肌で感じるには限界だったかなと。こちらの環境に身を置くことが大事だなと思って移籍をしたので。今もその考えは変わらないです。やはり慣れというか、ヨーロッパのいろんな人種の選手たちとプレーできることに関しては、日本では得られない経験だなと思います。

――そこはJリーグのベースが上がらないと難しいのでしょうか?

 そうですね。少し前に、内田篤人さんが引退してインタビューを受けたときに、「やはりちょっと違う競技のように感じる」という趣旨のコメントを残されていたのを見ました。彼と僕ではやっているリーグの環境も違いますし、レベルも違いがありますけど、概ね同意できる意見だなと感じています。それはまだ日本サッカー全体を改善していかなければいけない、ということで、時間なのか、経験なのか、歴史なのか、長い年月をかけて積み上げていくべき部分だと思います。短期的な積み上げではできない部分だと思うので。

 違う競技であるかのように感じるとか、いろんな言い方があるとは思いますけど、そこの何かがやはり世界のトップレベルで求められていたり、ヨーロッパレベルで求められている部分だと思うので、肌で感じていけるような環境を作ることが大事になっていくかなと思います。

――ワールドカップ(W杯)を軸に4年周期と考えると、2020年は折り返しのタイミングです。現在地をどう感じていますか?

 W杯が終わった後に、もっと高いレベルの、チャンピオンズリーグに出られるようなチームに移籍して、高いレベルの大会を経験したいと発言したと思います。ですが、今はそういった舞台に現実としては立てていません。だからといって自分自身に悲観的になっているわけではなくて、自分の現実として受け止めて、昨日より今日、今日より明日と、一日一日、自分を成長させるために毎日を過ごしています。

 もちろん、これから先やはり大きな大会を経験したい、レベルの高い場所に身を置いて、さらに自分のサッカー観を磨いて、経験値を積み上げていきたい、キャリアを築きたいという願望もあります。でも、今は自分が置かれている状況に対して最大限の努力をすることに集中しています。2部から1部へという今年のチームもそうですし、個人的な目標を成し遂げるためにやっている最中でもあります。満足もしていないし、悲観的にもなっていません。ありのままの自分をしっかりと見つめて、毎日を過ごしているという感覚でいます。

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著者プロフィール

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

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