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J1月間MVP 鹿島エヴェラウドが決めれば負けない「良い偶然を続けられるように」

飯尾篤史

手強いDFはジェジエウとチームメートの…

王者・川崎Fとの一戦ではDFジェジエウのマークに苦しんだが、窮地を救う同点ゴールを決めた 【(C)J.LEAGUE】

――鹿島は日本で最も多くのタイトルを獲っているクラブですが、特に今季は、若返りを図るというか、ここ何年かでベテラン選手が引退したりして、転換期を迎えていると思います。そういう現在のチームに対しては、どういう印象を抱いていますか?

 若返りというのは、どのクラブでも、代表チームでも起こり得ることなので、チームの進歩の過程において、自然な流れだと思います。ただ、今年は特に、僕たちブラジル人選手、さらに日本人選手だけじゃなく、スタッフ陣もガラッと変わったそうなので、シーズン当初はまだ芯がしっかりしていませんでした。でも、時が経つにつれて固まってきて、鹿島の哲学が、若い選手にも浸透してきています。残念ながら今年はタイトルを獲れない状況になってしまいましたが、来年は鹿島が本来いるべき順位で、タイトル争いをしていると思いますし、それが義務だと思っています。

――今季のタイトル獲得の可能性はなくなったものの、良い順位まで盛り返してきています。そのなかで、エヴェラウド選手が17ゴールを奪い、しかも得点したゲームで一度も負けていないということが、鹿島の復調の大きな要因だと思います。

 自分が得点できた試合に負けていないということは、知っています。もちろん、偶然が重なってそうなっているんでしょうけど、良い偶然なので、ずっと続いてほしいですね(笑)。僕が毎試合ゴールを決めれば、鹿島はずっと負けないということ。それが実現できるように、頑張っていきます。

――リーグ序盤の4、5試合は、チームも勝てず、エヴェラウド選手もゴールを奪えませんでした。このまま点が取れないんじゃないか、という不安はなかったですか?

 シーズン当初は、チーム全体として戦術がうまく機能していなかったのは事実です。“ハマってない”状態でした。ただ、日々のトレーニングのレベルは高かったので、ハマり始めたら自然と勝利がついてくるんじゃないか、という感触はありました。だから、不安はなかったし、自分も近いうちにゴールが取れるはずだという自信がありました。実際、継続して得点を重ねられるようになったし、チームも勝てるようになっていった。やはり、間違っていなかったと感じています。

――もうすぐ1シーズンを戦い終えますが、ここまでJリーグで戦ってきて、手強いと感じたDF、素晴らしいと感じた相手チームを教えていただけますか?

 どのチームも素晴らしいディフェンス陣がいて、簡単な試合はひとつもありませんでした。苦しい試合が多いなかで、川崎フロンターレのジェジエウ選手が対戦して最も困難だったかな、と思います。ただ、うちのセンターバックの犬飼智也選手も素晴らしいセンターバックです。今年1年ですごく成長しましたし、常に高いパフォーマンスを発揮しています。彼とは練習で対戦することがあるんですけど、僕にとって一番やっかいなDFですね。

ヒゲを生やすと強く見えませんか?

エヴェラウドは周囲の助けもあって、日本での生活に満足しているという。家族で富士山を訪れたことを教えてくれた 【スポーツナビ】

――ザーゴ監督が今年から鹿島の指揮を執っています。ブラジル時代に交流や面識はあったのでしょうか? ザーゴ監督はどんなタイプの監督ですか?

 ブラジル時代に交わることはなかったです。対戦もしなかったですし、一緒のチームになることもなかったので、テレビでしか見たことはありませんでした。ザーゴ監督は言葉数は少ないんですが、すごく細かいところまで修正してくれる監督です。シーズン序盤は監督も苦しんでいたと思いますし、慣れるまでは全員が苦しんでいたなかで、監督の伝えたいことが浸透し始めて、結果もついてきた。今も満足はしていないと思いますが、チームが向上していることは実感できている、全体で共有できているんじゃないかな、と思います。

――日本でプレーする理由のひとつとして、日本の文化にも興味があったとうかがいました。日本での生活や日本の文化は楽しめていますか?

 文化というより、日本の人々のことが一番気に入っています。言葉が通じず、困難や問題もあるなかで、日本の方々はみんな親切で、手を差し伸べてくれます。日本人の献身性や他人をリスペクトする精神は、自分のいた国から比べたら尊いものです。それはずっと、自分にとっては残っていくものだと思います。あと、楽しかったことというと、富士山ですね。家族で一度行ったんですが、ものすごく気に入りました。息子たちも気に入っていて、替え歌で富士山の歌を歌っています(笑)。

――あと、エヴェラウド選手は、おヒゲがお似合いですね。ゲン担ぎなのか、こだわりなのか、どうして生やされているのでしょう?

 ヒゲを生やすことによって、ちょっとは強く見えませんか(笑)。普段と雰囲気が変わるかなと思っているんです。でも、見られる職業でもあるので、試合前には必ずヒゲと髪の毛のお手入れはしています。たまに面倒臭くなって伸ばしっぱなしにすることもあるのですが(笑)。

――今シーズン、あるいは近い将来に鹿島で成し遂げたいことを、どう思い描いていますか?

 個人の目標としては、必ず自分を出し切るということです。これからも手を抜かず継続してやっていくつもりです。練習はウソをつきませんし、練習で出し切り続ければ、結果は必ずついてくると信じています。だから、目標を掲げるとすれば、数字や結果ではなく、自分を出し切り続けるということに尽きます。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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