連載:アスリートに聞いた“オリパラ観戦力”の高め方

廣瀬悠・順子が組む「公私の二人三脚」 パラ柔道で育まれたおしどり夫婦の心得

C-NAPS編集部

2人の強さの秘訣は「オンとオフを切り替えないこと」

オンライン取材中も仲睦まじい様子を見せてくれた廣瀬夫妻。互いに尊敬し合っていることが、2人の絆を物語っている 【写真:C-NAPS編集部】

順子 日々の練習も食事管理も大変ですが、常に二人三脚でやっているからこその強みはあると思います。悠さんは私のコーチでもあり、小さい頃からやってきた自分の柔道の形を否定せずにプラスアルファの指導をしてくれます。なので、すごく納得して日々の練習に取り組めています。しんどいことがあっても「悠さんがいるから大丈夫」と思える心強さもあるし、何より一緒にいて楽しいんですよね。昔の自分はいつも思い詰めながら柔道をしていたので。競技に対する取り組み方が変わったし、結婚して本当に良かったと思っています。

 順子は「やり続ける天才」です。強力なライバルがいて壁にぶち当たったら、普通なら諦めたくなるじゃないですか。でも練習においても、「以前は10回投げられたけど、今回は8回だけで済んだ」と常に成長し続けることができる選手なんです。だからリオが終わってから世界ランキングが最高2位まで上がりましたし、そういう意味で僕は順子を尊敬しています。

順子 私こそ、悠さんがいなかったらもう柔道をやめていたかもしれません。ここまで来られたのは悠さんのおかげだと思っています。コロナ禍で目標が遠のいた時も、2人だったからこそ頑張れました。

 夫婦で事業を営んでいる場合、オンとオフを分けている家庭も多いかもしれません。でも自分たちにはその必要はありませんね。2人でいて「ずっと普通」ですし、どこにいてもこのままの関係性です。畳の上でも、家の中でも常に2人とも自然体なんですよ。シンプルに2人でいることを楽しみ、常に協力し合うことが自分たちのスタイルなので、オンオフの切り替えは必要ないと思っています。

日本のお家芸・柔道をもっとメジャーなスポーツに

目指すは夫婦そろってのメダル獲得。自国開催となる東京パラリンピックで、廣瀬夫妻の悲願を成し遂げることはできるのか 【写真は共同】

 僕は2020年に41歳になりました。東京パラリンピックの1年延期は、体力のピークを合わせるうえで正直、簡単ではないと思っています。でもそれは世界中のすべての選手が同じ条件です。今の自分たちよりも強くなった姿を見せて、最高の状態で本番を迎えたいですね。順子は金メダルを取って、僕は銅メダルを取ります。「夫婦で金メダル」と言いたいところですけど、僕は無理です(笑)。でも順子は優勝できる可能性が僕には見えています。

順子 リオで銅メダルを取った時にたくさんの方が喜んでくれて、その後も自分たちが想像できないくらいたくさんの方が応援してくれました。みなさんにはぜひ恩返しがしたいです。そして、活躍する姿を通して障がい者への理解がもっと深まればいいなと願っています。

 今でも街で声をかけていただいたり、学校訪問しても自分たちのことを知ってくれていたりすることが増えました。東京パラリンピックのおかげで、パラスポーツへの関心が高まっているのだと感じますね。パラ本番が終わった後も続いてほしいですし、バリアフリーな社会の形成につながればと思います。

 純粋に自分たちの存在をもっと知ってもらいたいという思いもありますね。一般の方だけでなくアスリート同士でも、まだまだ視覚障害者柔道のメダリストは名前が浸透していません。柔道は日本のお家芸じゃないですか。柔道の今後を考えると、五輪に負けないくらいパラリンピックで自分たちも活躍しなければいけないと思っています。パラリンピックでの活躍を通して柔道人口を増やし、もっともっとメジャーなスポーツにしていきたいです。

(取材・執筆:久下真以子)

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著者プロフィール

ビジネスとユーザーを有意的な形で結びつける、“コンテキスト思考”のコンテンツマーケティングを提供するプロフェッショナル集団。“コンテンツ傾倒”によって情報が氾濫し、差別化不全が顕在化している昨今において、コンテンツの背景にあるストーリーやメッセージ、コンセプトを重視。前後関係や文脈を意味するコンテキストを意識したコンテンツの提供に本質的な価値を見いだしている。

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