LiLiCoおすすめ『人生の特等席』は必見 クリント・イーストウッドが伝えたいこと
これからもクリント・イーストウッドの「自由な」映画が観たい
老いていく親とどう向き合うべきか。娘・ミッキーの心の葛藤も描いている 【© 2012 Warner Bros. Entertainment Inc.】
ハリソン・フォードに似ているウチのお父さんも、年々老いていくので、その変化が気にかかります。
ミッキーは心配になってガスのもとに押しかけますけれども、たぶん私と同じような気持ちになったのではないかと想像します。そこが、この作品が内包しているテーマの1つである、“捨てる勇気”を持つことだと思うんですよね。仕事の世界で成功しかけているにもかかわらず、親が心配で駆けつけてしまう。
LiLiCoは、父親のことを想うミッキーに自分の姿を重ね合わせる 【© 2012 Warner Bros. Entertainment Inc.】
でも今は、一週間休んで忘れられるようであれば、私はそれまでの存在だったのだと思うようにしています。
クリント・イーストウッドには、いつまでも元気に映画を撮っていてほしいですね。ここ3年くらい会えていない。レギュラーの仕事が忙しくて米国に取材に行けず、それがちょっとさみしいんですけどね。
ウディ・アレンもですけど、クリント・イーストウッドは今のほうが好きなんですよ。息子のスコット・イーストウッドをちょい役で使ってみたり、『15時17分、パリ行き』で素人さんを使ってみたり、余裕があるから、自分が本当に描きたいものを描いている気がします。製作会社や製作委員会に気を遣わず、むしろ周りが彼に撮りたいものを撮ってもらうような動きになってきているのではないかと。テイストはそれぞれに違って幅広い作風ですけれども、どの作品も人間ドラマがしっかりしているという点は共通していて。
何かが吹っ切れたとき、人は輝きますよね。『ハリー・ポッター』が終わったとたんに髪を切ったハーマイオニー役のエマ・ワトソン、彼女の気持ちは分かりますよ。ずっと切りたかったんでしょうね。今は幅広い役を演じられるいい女優だということが分かります。
クリント・イーストウッドにも、そういう吹っ切れた感じが漂っているように思います。人に言われたことでなく、自分がやりたいことに突き進んでいる。
おそらく、彼は本物を見たいからこういうものを描くんですよ。世の中とはこういうものだと、それを映画で描ける余裕があるというのも素晴らしい。そしてそれができるのは、クリント・イーストウッドが、今まで真面目にやっていたからだと思います。
(企画構成:株式会社スリーライト)
LiLiCo(映画コメンテーター/タレント)
【写真提供:プランチャイム】