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再開したブンデス、マスクはシンボル?
取材記者が明かす厳戒態勢の裏側

区分けされたゾーン

控え選手たちは互いに距離をあけてスタンドに設営された仮設ベンチに座った
控え選手たちは互いに距離をあけてスタンドに設営された仮設ベンチに座った【Getty Images】

 この段階を経て私は、車をスタジアム地下にあるガラガラのガレージに走らせ、2005年のスタジアム修復以来メディアの人間には使用が禁止されていたエレベーターを使って、5階のメディアスタンドへ直接上った。プレス用の軽食室や、いつもならば記者たちが試合前に集まって話をする部屋などはすべて立ち入り禁止だった。


 記者席はいつもと同じ自分の席だったが、名前が書いてあって、ランチの入った袋が置いてあった(リンゴが1つにコカ・コーラが1缶、サンドイッチが1つ)。同じ列に普段は9人の記者が並んで座るが、今回はかなりの距離を置いて2人だけが座った。


 試合後は、また同じエレベーターを使って地下駐車場へ降り、すぐにスタジアムを後にした。いつもなら51,000人もの観客が入っているわけで、試合の後、こんなに早く家に帰れたことはない。記者会見、ミックスゾーン、少人数での囲み取材などはもちろんなかった。ただ、取材申請許可をもらえた数少ない記者たちのために用意されたWhatsApp(メッセージアプリ)で、1人につき本当に1問ではあるが、監督に質問をすることはできた。プリントメディアではフランクフルトの記者が8人、ボルシアMG付きの記者は2人だった。そして監督と、クラブが選んだ数人の選手のコメントも、後でWhatsAppでもらった。


 スタジアムは3つのゾーンに分けられていた。スタジアム内部(ピッチ、選手が出入りするトンネルとロッカールームなど)、スタンド、そしてスタジアム外敷地である。このゾーンごとに同時にいていいのは多くても100人。例えば内部に入っていいのは選手、控え選手、審判の他にチームスタッフ10人、ボールボーイ4人、カメラマン3人、救命隊員4人、セキュリティ4人、テレビの通信部門、ビデオ審判、データ集積要員15人である。


 スタジアムの雰囲気は練習試合、シーズン前の準備にする試合のようだった。スタジアムの静けさはやはり気持ち良いものではない。雰囲気は全くないし、ピッチで飛び交う言葉のほぼすべてが聞こえてくる。そして試合自体がただなんとなく進み、緊迫感は生まれず、生き生きとせず、味気なかった。


 私はヨーロッパリーグでフランクフルトが無観客試合を戦ったマルセイユにも帯同していたし(18年9月20日、ヨーロッパリーグ・グループリーグ第1節のマルセイユvs.フランクフルト)、3月のバーゼル戦も現場にいたので、無観客試合はこんなものだというのを経験済みだったから驚かなかった。ただ私は、安全対策や健康チェックがもっと大変なのではないかと想像していた。

いびつに感じた取材体制

無人のスタンドに囲まれる中でのサッカーに熱狂は生まれない
無人のスタンドに囲まれる中でのサッカーに熱狂は生まれない【Getty Images】

 オーガニゼーション(組織運営)という意味では、私が知る限り、すべてそつなく行われたようである。時々ファンの声を聞いたような気がしたが、姿は見ていない。セキュリティもいたし、だいたいスタジアム自体が厳しく封鎖されていた。


 ファンたちの歌声が好きかどうかは関係なく、このような無観客で行うサッカーの試合を好む人はドイツに誰もいないと思う。ファンたちの情熱など、全く感情のない試合を見てもとにかく楽しくない。得点の際のセレブレーションが禁止されているのも奇妙だ。選手たちがハイタッチさえできないのは異様だし、現実離れしている。控え選手がマスクを着けているのに、監督がしていないのもおかしい。そもそも、マスクはただのシンボルのように私には思える。選手たちは何度も検査をして陰性の結果が出ているのであるし、なぜマスクが必要なのだろうか?


  そして、私はジャーナリストなので言わなければならない。私たちがもらえる情報は現在、クラブが用意したものしかない。誰も選手や監督の近くに行くことができないため、独自のリサーチはもはや不可能である。私たちの情報源は、クラブの広報部のフィルターを通したもの、あるいは有料テレビ放送の『Sky』のものしかない。


『Sky』は最近、今季の放映権料の残り3億ユーロ(約348億円)をブンデスリーガに振り込み、リーグの存続を可能にした。そんな彼らは、すべてを尽くして自分の巣を汚すようなことは避けるはずだろう(ブンデスリーガとSkyは依存関係にあるため、批判的なことは聞かない、言わなくなるといった意)。


(翻訳:円賀貴子、企画構成:Kick&Rush)

トーマス・キルヒェンシュタイン&インゴ・デゥルステヴィツ

ドイツ『フランクフルター・ルントシャウ』紙記者

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