『ファイティング・ファミリー』で感じる! アドレナリンが出るときの“恍惚感”
リングは自分を出せる最高のステージ!
「次のオレになるな、自分を出せ」。この助言はプロレスに限らずすべての職業に言えることとLiLiCoは言う 【(C)2019 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC…】
兄妹がトライアウトの会場でもあるSmackDown収録現場のバックステージで初めてロック様(ドウェイン・ジョンソン/ザ・ロック)に会ったとき「次のオレになるな、自分を出せ」というアドバイスをされますけれども、これはどの職業についても言えることだと思います。誰かを真似しても自分ではないので、どこかで崩れてしまう。あの言葉には、ロック様が役者となった今では重みを感じます。
このシーンのなかでロック様は「どうすればいいかオレに聞くな!」と兄妹に向かって怒るようにまくしたてた後で素に戻り、「これがオレだ」と。今のが例だぞ、というところを見せるんですね。そのように、自分なりに自分のキャラクターを押し出せというアドバイスをする。プロレスラーであると同時に役者であるという最大の見せどころであって、すごくいいシーンなんですよね。
映画全編のプロデュースを手掛けたロック様がそれに留まらず重要な場面で出るというのも、彼からプロレス界なりペイジへのプレゼントなのかなと、私は思うんですよ。
ペイジがトライアウトを経てWWE傘下のNXTへと修行に出たとき、ほかのモデルやチアガール上がりのディーヴァたちとちょいちょい衝突しますよね。私もタレントさんがちょっとプロレスに入ってきて、痛くないのに『痛い』と言ってみたりするようなケースは、あれは嫌なんです。やるならとことんやってほしい。
この映画を観て私は自分が両国でデビュー(2015年、宮武俊とのタッグでアジャ・コング&大石真翔組と対戦)したときのことを思い出しました。
花道を出たら、タレントがプロレスやるんでしょ、と言いたげな視線が刺さったんですけれども、それで『よっしゃ』と燃えまして、忘れもしない、一番最初に大石選手にドロップキックをしたんですよ。
その瞬間、両国国技館が縮んだんです。
どういうことかというと、みんなが背もたれに深く座っていたものが、身を乗り出して前かがみになったんです。だから壁が縮んだように見えたんです。そしてアドレナリンが出てきました。あの感じなんですよね。
私は何度もケガをして足首のねんざくらいは毎試合やっているんですけど、アドレナリンが出ると痛くなくなるんです。
試合後は負けた悔しさでも勝った嬉しさでもアドレナリンが出ているから、大丈夫ですかと訊ねてくるドクターにも『大丈夫です』と言うんですけど、着替えて帰ると6時間後くらいに痛くなり、負傷に気がつくんです(笑)。
ペイジも子どもの頃、試合を少し怖がっていますが、一発技が決まるとアドレナリンが出て怖くなくなる。プロレスラーはみなそういう思いをしているんだなと感じさせられるシーンです。
あと1つ注目してほしいのは、主演のフローレンス・ピュー。
今一度見直してほしい女優です。あまりに堂に入っているのでプロレスラーの新人を使ったのではと思っている人もいるかもしれませんけど、『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』でのエイミー役、『ミッドサマー』でのダニー役も彼女なんですよね。それだけの演技の幅がある実力の持ち主ですから、ぜひ見て確かめてほしい。
お父さん役のニック・フロストも大好きです。
『宇宙人ポール』とか『ホット・ファズ』にも出演したコメディアンとして一流の人物です。彼もすごくいい役者です。
映画はどこから好きになってもいい。このお父さんおもしろいなと思ったら、ここから枝分かれしていろいろな映画を観ていただけたらいいなと思っています。
(企画構成:株式会社スリーライト)
『ファイティング・ファミリー』
自粛生活で忘れかけていたアドレナリンが出るときの恍惚感。スポーツ特有の気持ちいい瞬間を思い出させてくれる一本だ 【NBCユニバーサル・エンターテイメント】
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※ 2020年5月の情報です。
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LiLiCo(映画コメンテーター/タレント)
【写真提供:プランチャイム】