連載:怯まず前へ 常に結果を出し続けるチームと強い心の作り方

「柏原に頼っていてはいけない」 箱根で学んだエースを活かすチーム作り

酒井俊幸
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第1回

早稲田大とデッドヒートを繰り広げた2011年の箱根駅伝。このシーズン、柏原は不調で出雲駅伝を欠場していた 【写真:日本スポーツプレス協会/アフロスポーツ】

 指導者には、何度か転機が訪れるものです。私にとっても、東洋大チームにとっても、箱根駅伝の3連覇に挑んだ2010年度が大きなターニングポイントになりました。

 この年は双子の設楽啓太、悠太兄弟など、有力な1年生が入学した一方で、3年生エースの柏原竜二が不調でした。ケガもあり、心身の疲労が重なった柏原は、スランプに陥りました。

 そんなとき、私に焦りがあったら、本人はさらに不安な気持ちになります。秋の駅伝シーズンになれば、柏原なら絶対に上がってくると信じていましたし、彼にも「大丈夫だ」と言い聞かせました。
 三大駅伝初戦の出雲駅伝は、初めて柏原を起用しませんでした。
 本人は走れると思っていたようですが、私は「絶対に起用しない。竜二のためにならない」と言い切りました。柏原の力がチームにとって大きいことは間違いありませんでしたが、そこは譲れません。

 柏原は現地にも連れて行かなかったので、レース当日は大学で授業を受けていました。設楽兄弟ら3人の1年生を起用して4位という結果は悔しかったでしょうが、その悔しさを必ず次への発奮材料にするのが柏原という選手です。
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著者プロフィール

1976年福島県生まれ。学校法人石川高等学校卒業後、東洋大学に入学。大学時代には、1年時から箱根駅伝に3回出場。大学卒業後、コニカ(現・コニカミノルタ)に入社。全日本実業団駅伝3連覇のメンバーとして貢献。選手引退後は、母校である学校法人石川高等学校で教鞭をとりながら、同校の陸上部顧問を務めた。2009年より東洋大学陸上競技部長距離部門の監督(現職)に就任。就任1年目でチームを優勝に導くという快挙を達成、箱根駅伝では、優勝3回、準優勝5回、3位2回という成績を達成。

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