連載:コロナ禍の散歩&ランを安全に行うために

川内優輝に聞くコロナ禍のランナーの心得 「本当に正しい情報かを考えて行動を」

栗原正夫

コロナ終息後は「観光や地域振興を応援できれば」

コロナが終息したら観光や地域振興の応援をしたいという川内。写真は昨年4月の川内の郷かえるマラソンの時のもの 【栗原正夫】

――多くのマラソン大会が延期や中止となっている中、近年は世界中で市民マラソンを含め年間約40ものレースに参加してきた川内さん自身も、3月8日のびわ湖毎日マラソンを最後にレースに参加できていません。また、今後の目標の1つにしていた2021年アメリカ・ユージーンでの世界選手権も、2022年への延期が決まりました。モチベーションはどう保っているのですか。

 レースは開催が未定のゴールドコースト・マラソン(7月5日、オーストラリア)を除き、8月中旬までに入っていたものは、すべて延期か中止になりました。イベントや講演会も同様で、いまはほとんど予定が入っていません。ただ、社会が活動の自粛を求めている中、自分なりに切り替えはできています。

 モチベーションについては、もし私が五輪や世界選手権だけを目標に競技を続けてきたような選手であれば、心が折れてしまったかもしれませんが、私には「ランナーとして生涯現役」という大きな目標があります。ユージーンの世界選手権も(4月20日から9月14日に延期が決まった)ボストン・マラソンにしても、延期になったからといって死ぬわけじゃないですから(苦笑)。そういう意味では、私はほかの選手に比べ大らかな気持ちで、いま自分ができることをやればいいと腹をくくっているのかなと思います。

――とにかく一刻も早いコロナウイルスの終息を願います。

 コロナが終息した時には、私もいままで以上に精力的に活動したいと思っています。海外レースはもちろん、国内のレースやイベントにも積極的に参加し、いま苦しんでいる観光や地域振興などを少しでも応援できれば。そういう活動は絶対にやっていきたいです。

 最近は、自宅でダンボール10箱ほどに詰めっ放しになっていた過去の陸上関連の資料や記事などを、整理しながら電子化しているところです。その作業中に過去の自分の記事を見つけ、当時の気持ちを思い出したり新たに気づいたりしたこともありますので、そうした話は活動再開後のイベントや講演でお話できたらと思っています。外出自粛が要請されていなければ、資料を整理することもなかったでしょう。そう考えると気持ちが暗く沈みがちな中でも、今後に役立たせればと少しでも前向きになれている気がします。

――最後に、市民ランナーのみなさんにメッセージをお願いします。

 場合によっては(コロナをまき散らしていると)ランナーに社会的な厳しい目が向いているかもしれません。そうした中で日々状況も変わっているので、情報を冷静に見極めることは大切です。まずはコロナに感染しない、感染させないということが第一。その「目的」を達成するための「手段」を、一人一人が冷静に考えることが大切だと思います。

おうち時間に読みたい 川内優輝選手オススメの一冊

『マラソンの青春』(君原健二/高橋進 著)
「五輪に3度出場した伝説のランナー君原健二さんと高橋進コーチの本です。君原さんの赤裸々な言葉が散りばめられており、五輪銀メダリスト(1968年メキシコ五輪)の苦悩や気持ちが心にすごく響きました。他のマラソンランナーの本もいろいろと読みましたが、この『マラソンの青春』が一番読みやすい言葉で選手の気持ちが書いてあり、すべてのランナーにおすすめしたい名著です。この本を読んでから、君原さんをそれまで以上に尊敬するようになり、他の君原さんの本も読みましたが、断トツに素晴らしい本だったと思います」(川内優輝)

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著者プロフィール

1974年生まれ。大学卒業後、映像、ITメディアでスポーツにかかわり、フリーランスに。サッカーほか、国内外問わずスポーツ関連のインタビューやレポート記事を週刊誌、スポーツ誌、WEBなどに寄稿。サッカーW杯は98年から、欧州選手権は2000年から、夏季五輪は04年から、すべて現地観戦、取材。これまでに約60カ国を取材で訪問している

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