変貌を遂げた浦和のカギを握る男 関根貴大が示す「昨季との違い」
昨季、2年ぶりに浦和に復帰した関根。今季はその攻撃センスをいかんなく発揮している 【(C)J.LEAGUE】
リーグトップクラスの選手層を誇る
昨季、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)で決勝まで勝ち進んだものの、リーグ戦では14位に沈み、得点数はリーグで4番目に少ない34得点、1試合平均でちょうど1得点しか奪えなかったチームが、ここまで8得点をあげている。
たった2試合とはいえ、結果だけではなく内容を含め、昨季とは目に見えて変貌を遂げている。その大きな要因に挙げられるのは戦術、フォーメーションの変更だ。
初めてプレシーズンからチームを指導する大槻毅監督が「主体的な意図を持ったサッカー」と提唱する今季の浦和は、ディフェンスラインを高く保って全体をコンパクトにし、前線からボールを奪いにいって縦に速い攻撃を仕掛ける、攻守にアグレッシブなサッカーを展開している。
さらに、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督(現北海道コンサドーレ札幌監督)が就任した2012年から慣れ親しんできた3バックとも決別。キャンプから一貫して4-4-2でトレーニングや試合を重ねている。
大槻監督が「選手の適性を考えた」と変更の理由を語るように、確かに選手たちは生き生きとしている。静かなオフを過ごして補強・戦力分析で低評価されたチームは、リーグトップクラスの選手層を誇るチームに“変化”した。
チーム全体、選手各々が昨季以上に躍動しているが、中でも今季の活躍が期待できる選手が関根貴大だ。
中央での仕事ができることも証明したい
ポジションこそ浦和でプロデビューしてから移籍するまでプレーしていたウイングバックだったが、役割は違った。攻撃時にはウイングのように高い位置を取って攻撃に従事していたかつてとは違い、低い位置での守備的な役割が増えた。
しかし今季は4-4-2になったことで後方にもうひとり、サイドバックの選手が構えることになった。3年ぶりに浦和の選手としてシーズン始動を迎え、キャンプで練習や練習試合を重ねるなかで、関根はその利点を確かに感じていた。
「ゴール前に顔を出したあと、一番後ろまで戻る必要がないので、その分のパワーは攻撃に使えると思う」
サイドハーフもハードワークすることに変わりはない。「攻守に重要だし、大変なポジション」とも自覚している。ただ、持ち味を出しやすいことは実感できていた。
攻撃面でも変化を感じている。ウイングバックはいわば“やり”だった。サイドで上下動を繰り返し、クロスでFWやシャドーのゴールをお膳立てする。だが、サイドハーフの役割はそれにとどまらない。
「僕のイメージではクロスというよりも中でのコンビネーションが増えるのかなと思っている。インサイドに入ったときのバリエーションだったり、ゴール前に顔を出すタイミングは絶対に増えるので、決定機が多くなるという感覚がある」
単なる「サイドプレーヤー」ではなく、中央での仕事ができることも証明したい。そのためにゴールを取りたい。開幕前から関根はそう繰り返していた。
だからこそ、仙台戦後に不満げな表情を浮かべていた。チームが大勝し、自身が先制点をお膳立てしたにもかかわらず、「ゴールを取れなかったので残念」が試合後の第一声だった。
「1-0でのゴールとか決勝点はもちろん大事。でも、チームが3点、4点と取れるような試合で決められるかどうかが、すごく重要です」
それはゴールにこだわるからこそ発せられる言葉だった。
関根の技術力が発揮されたゴール
左サイドのマルティノスがクロスを上げたとき、関根はペナルティアークのわずかに外にいた。そこは、3-4-2-1であればシャドーがいる場所であり、ウイングバックがいるポジションではなかった。
「あの時間帯に中に3枚入っていけた。あれが今季のレッズの良さだと思います」
関根はこのゴールを「自分のところにボールが転がってきて、それを押し込めた」と表現したが、この説明で思い浮かぶのは、ゴール前にこぼれたボールを押し込んだ、いわゆる“ごっつあんゴール”だろう。
しかし実際には、ドリブルでペナルティエリアに進入し、密集地帯で相手3人を置き去りにして左足で決めたコントロールシュートだった。関根の類いまれなる技術力が発揮されたゴールだった。
この中断期間も関根は、切れ味鋭いドリブルだけではなく攻守に渡って球際で激しいプレーを見せながら、右サイドバックや右ボランチといったポジションの近い選手とコミュニケーションを取りながら連係の向上も図っている。
「昨季との違いを見せたい」
チーム全体で持つ共通意識が実現されたとき、その象徴のひとりとして関根の名前が挙げられるはずだ。
(企画構成:YOJI-GEN)
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