島川慎一が誓う「金メダル獲得の凱歌」 勝利への思いが衝突する車いすラグビー
永遠のライバル、オーストラリアから学ぶべきは「粘り強さ」
オーストラリアのライリー・バットは永遠のライバルであり、要注目のプレーヤーだ 【写真:ロイター/アフロ】
ライリーの持ち点は3.5で、スピード、パワー、テクニックのすべてにおいて世界トップクラスの実力を誇ります。ただ、特筆すべきは「粘り強さ」ですね。昨年10月に東京で行われた車いすラグビーワールドチャレンジ2019では、日本は準決勝でオーストラリアに1点差で敗れました。最後の最後まで逆転を狙っていたのですが、ラストにライリーがボールを死守したことで試合が終了しました。彼の勝利への執念やボールへの執着心には目を見張るものがあるし、そこは見習うべきところだと思います。
実は18年の世界選手権では、オーストラリアは決勝で日本に1点差で負けて優勝を逃しているんです。ライリーは今回そのリベンジを果たしたわけですから、体中で喜びを爆発させていましたね。一方で日本は、多くの選手が悔し涙を流しました。でも、これがパラリンピックの本番じゃなくて本当に良かったです。日本にとっては「どうして勝てなかったのか」をもう一度考える良い機会になったし、オーストラリアとの戦いで学ぶことは大きかったと思います。
日本とオーストラリアは対戦回数が他の国と比べても多く、付き合いが長いんですよね。日本が強くなる前は強化のサポートをしてくれていたんですが、オーストラリアと競るようになってからは「もういらないだろう?」と言われて情報をもらえなくなりました(笑)。でも本当にこれまでいろいろと助けられました。東京パラリンピックの決勝の舞台では、ぜひオーストラリアと戦いたいですね。
東京パラリンピックでの金メダル獲得でさらなる競技発展を
普段は鋭い眼光の島川だが、時折優しい笑顔も見せてくれた。パラリンピックの舞台でもそんな彼の笑顔が見たい 【写真:C-NAPS編集部】
自国開催の意味は、自分にとってもやはり大きいですよ。家族もそうだし、地元・熊本の友人も来てくれるかもしれない。大舞台で自分のプレーを目の前で見せられるチャンスはなかなかないですからね。身内だけではなく日本中に応援の輪が広がってほしいし、競技人口も増えてほしいと願っています。もちろん、これだけ舞台が整った中で結果を出さないといけないというプレッシャーも同時に感じています。
20年間でパラリンピックを取り巻く環境は大きく変わりました。私は04年のアテネ大会から出場していますが、当時は日本代表のユニフォームは自腹でしたし、遠征する際は仕事も欠勤扱いでした。普段の遠征費も工面しなければならず、携帯代が払えなくて止まったこともあります。でも7年前に東京2020の開催が決まってから、環境は格段に良くなりました。大事なのは、終わった後もその環境を継続できるかどうかですよね。そのためにも大事なのが、金メダルの獲得です。
日本は、おととしの世界選手権で優勝しましたが、もうあれから2年が経過しました。もう一度チームみんなで引き締め直さないと、金メダルは簡単には取れません。オーストラリアだけでなく世界ランキング2位の米国も実力が拮抗(きっこう)しているし、4位のイギリスも着実に力をつけてきています。どんな良い試合をしても1点差で惜しくも負けても、負けは負けなんです。本番では勝たなければ意味がないので、必ず一番良い色のメダルを取ってみせます。
(取材・執筆:久下真以子)