柔道、早期の代表内定がもたらす意味 金メダル量産を実現するために

平野貴也

早期内定「メリットはすごくある」

最重量級の代表に選出された原沢。五輪2連覇中のテディー・リネール(フランス)が金メダル獲得の壁となる。早期内定によって、その対策にも時間がかけられるメリットが生まれた 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 すでに内定が出ていた女子78キロ超級の素根輝(環太平洋大)を加え、計13人の内定選手が決まり、今後は本番に向けた調整に入る。

 東京五輪の柔道個人戦は、男女各7階級が行われる(ほかに新種目の混合団体がある)。日本は、開催国枠で全階級1人の出場枠を保有。今回、代表選考は、3段階を設けた。

 第1段階は、昨夏の世界選手権、19年11月のグランドスラム(GS)大阪大会の終了時。負傷による欠場や、準優勝などで2大会連続優勝を逃す選手が多く、代表内定は素根のみにとどまった。

 今回の選考は、第2段階。昨年12月のワールドマスターズと今年2月の欧州GS2大会(パリ、デュッセルドルフ)を主な対象大会とし、過去の大会成績も参考に選定が行われた。

 このタイミングで多くの選手が決まったことには、意味がある。前回のリオ五輪では、代表候補の直接対決となる全日本体重別選手権後の選定で、最重量級に関しては、さらに後に行われる、無差別級の全日本柔道選手権を代表選考対象としていた。しかし、今回は五輪本番に向けた調整期間を十分に取るために早期決定のスケジュールが組まれたのだ。

 2大会連続の五輪出場で、男子100キロ超級の原沢久喜(百五銀行)は「対外国人選手に集中できるし、国際大会を1つ挟んで集中してやっていけるので、メリットはすごくあると思います」と、前回より1カ月以上早く内定を得て明るい表情。国内では練習相手に相手のスタイルを再現してもらってリアルなイメージを持ち、海外ではロシアやジョージアの大型選手が参加する国際合宿に積極参加したいと今後の調整イメージを描いていた。原沢は負傷でGSデュッセルドルフを欠場。ほかにも男子100キロ級のウルフ・アロン(了徳寺大職員)ら負傷を抱えている選手がおり、早期の代表決定は、コンディション調整の面で間違いなくプラス材料となる。

 残すは、丸山城志郎(ミキハウス)と阿部一二三(日本体育大)が争う男子66キロ級のみで、最終段階となる4月の全日本体重別選手権後に決まる。

チームJAPANに勢いを与える

 東京五輪の柔道は、開会式翌日の7月25日から競技が行われ、日本代表勢の先陣を切る格好になる。

 中でも初日に試合が行われる男子60キロ級の高藤直寿(パーク24)は「リオ五輪で銅メダルに終わってから、ずっと悔しい気持ちを持って戦ってきた。(国際大会で)初日に金メダルを取っても、ほかの選手が次の日から目立ってしまって、僕が全然目立っていない。試合を見ていて『これが柔道だ!』という(インパクトのある)試合をしたい。ぜひ、僕を見て下さい」と猛烈にアピールした。

 豪快な一本勝ちで金メダルを取れば、チームJAPANに勢いを与える。

「金メダルを取って、他の競技の勢いにつなげられるように頑張りたい」(阿部詩)

 厳しい代表争いを勝ち抜いた精鋭たちは、大会序盤の金メダル量産を実現するため、早期内定のメリットを生かして調整に取り組む。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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