2030年を見据えたJリーグのビジョン シャレン、アジア重視…5領域の未来像

元川悦子

7日の「2020Jリーグビジネスカンファレンス」では村井満チェアマンらがJリーグの2030年へ向けてのビジョンなどを示した 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 8日のFUJI XEROX SUPER CUPからスタートした2020年国内サッカーシーズン。16日にはYBCルヴァンカップ、21日にはJ1も開幕し、28年目のJリーグの熱戦が本格的に繰り広げられることになる。

 それに先駆けて7日、「2020Jリーグビジネスカンファレンス」が都内で開催され、村井満チェアマンや原博実副理事長らが「ビジョン2030」と「中期計画2022」に基づいた今後の方向性を説明。社会連携、フットボール、toC戦略(ファンへの取り組み)、事業強化、経営基盤の5領域に関する未来像が示された。

 今回、Jリーグが掲げた「ビジョン2030」の各領域のテーマは以下の通りとなっている。

1.社会連携…想いを共有し、仲間のチカラを借りて地域とクラブの繋がり&笑顔を増やす。
2.フットボール…日本型人材育成システムで世界5大リーグに名を連ねる。
3.toC戦略…熱狂のスタジアム、国内最高のスポーツエンターテインメントへ。
4.事業強化…事業の選択肢を増やし、Jリーグの多様な価値をマネタイズする。
5.経営基盤…自律的な経営と人材育成で、地域に愛される存在となる。

 これら概念に基づいて、カンファレンスの場ではより具体的な説明がなされた。

「シャレン」で豊かな地域創造を

米田恵美理事は「シャレン」の推進について現状と今後のビジョンを力強く語った 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 まず興味深かったのが、1の社会連携。19年時点でJリーグの55クラブは年間2万回以上のホームタウン活動を実施しているという。1クラブ当たりだと年間390回。毎日1回以上は何らかの活動をしていることになる。

「クラブ側からこれ以上のアクションを起こすのは限界がある。クラブの思いを仲間と共有し、地域とクラブのつながりを増やしていければ、活動回数も多くできるし、質も高められる。そうなっていけば理想的」

 村井チェアマンが強調するように、今後はクラブからの一方通行ではなく、地域を支える人々が力を合わせ、ホームタウンを盛り上げる形を作っていくことが肝要なのだ。

 こうした動きを推進すべく、Jリーグでより親近感のある「シャレン」という呼称を19年から使用、意識向上を図っている。同領域担当の米田恵美理事によると「シャレンの定義は3者以上の協働」。関わるのはクラブ、行政、大学の3者でもいいし、企業やNPO法人、サポーター組織の3者でもいい。そんな中、Jクラブの力はやはり絶大だ。「クラブには発信力や周囲をつなぐ力、エンタメ力などの強みがある。それを生かしながら、オフ・ザ・ピッチのパスサッカーを繰り広げられるように仕向けていけばいい」と同理事は力を込めていた。

 さし当たって20年は、防災、高齢者、子どもの3つに重点を置いていくという。

「子どもに関しては『孤食』が社会問題になっているが、練習後に一人で食事を取る選手も孤食。そういう人同士が集まって食事をすれば楽しい地域が生まれていく。そういったアイデアをどんどん実践してほしい」と米田理事は言う。30年に向けてシャレンがどこまで浸透し、豊かな地域創造につながるのか。先々の動向が大いに気になる。

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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