IDでもっと便利に新規取得

ログイン

不思議な縁に導かれて実現した守護神対決
帝京長岡・猪越と仙台育英・佐藤の「物語」

対戦が決まった時は「ワクワクして眠れなかった」

帝京長岡の猪越優惟(青)と仙台育英の佐藤文太には不思議な「縁」がある
帝京長岡の猪越優惟(青)と仙台育英の佐藤文太には不思議な「縁」がある【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 両チームに良いGKがいると、試合が締まる。まさにそれを表すような一戦だった。

 

 今大会、現時点でプロ入りが内定している者こそいないが、例年と比べてもGKは豊作と言っていい。3年生では徳島市立の中川真、青森山田の佐藤史騎、帝京長岡の猪越優惟、仙台育英の佐藤文太、2年生では興国の田川知樹など、才能豊かな守護神が少なくなかった。

 そして、等々力陸上競技場で行われた準々決勝の第2試合では、猪越と佐藤の直接対決が実現した。猪越は新潟県予選を含めて7試合連続無失点を誇り、2大会連続のベスト8進出に貢献。かたや佐藤は1回戦の五條戦で2本のPKを止め、同じPK戦となった3回戦の日大藤沢戦でも再び2本をストップするなど大車輪の活躍で、チームを30年ぶりのベスト8へと導いている。


 この2人には浅からぬ縁があった。猪越は宮城出身でFCみやぎバルセロナU-15から新潟の帝京長岡にやってきた。一方の佐藤は宮城生まれの新潟育ち。アルビレックス新潟U-15から、所縁のある宮城の仙台育英に進学している。


 それだけではない。猪越がこう語る。


「佐藤選手のことは仙台育英で1年生の時から(レギュラーとして)出場しているのを知って注目していたのですが、ある時、母親から『あなたと同じ年にご近所で生まれた子が、仙台育英で頑張っているよ』と言われて、それがまさかの佐藤選手でした。どうやら僕が生まれた時に住んでいた社宅の隣の隣だったらしくて」


 佐藤もまた、母親から不思議な縁について聞かされたという。


「仙台に来てから母親に、『帝京長岡のキーパーは、同じ社宅に住んでいた子だよ』と言われてびっくりしました。しかも隣の隣……。すごい確率ですよね。僕は生まれて3カ月くらいで新潟に引っ越したのですが、まさかこうして戦えるとは」


 猪越は言う。


「組み合わせが決まった時から、準々決勝で仙台育英と戦えないかなと思っていました。『(仙台育英が)勝ってこい、勝ってこい』とずっと願っていて、対戦が決まった時はワクワクして眠れなかった」

卒業後はともに関東大学リーグ屈指の強豪へ

佐藤(写真)と猪越は卒業後はともに関東大学リーグ屈指の強豪へと進む
佐藤(写真)と猪越は卒業後はともに関東大学リーグ屈指の強豪へと進む【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 こうして、ついに実現した今大会屈指のGK対決。試合は開始わずか1分、京都サンガ入りが内定しているMF谷内田哲平がゴールを決め、早々と帝京長岡が先制するが、以降は両者一歩も譲らない緊迫の展開となる。


 前半に猪越が仙台育英のMF斉藤涼優との1対1を、コースを完全に切って制すと、後半には佐藤が躍動する。後半37分に帝京長岡のFW矢尾板岳斗がカットインから放ったシュートを、素晴らしい飛び出しでブロック。その2分後にも町田ゼルビア入りが内定しているFW晴山岬のシュートをストップすると、さらに後半アディショナルタイムにも再び晴山のシュートをビッグセーブで阻止するのだ。


 試合は結局、1-0のまま終了。これで予選から8試合連続無失点となった猪越を擁する帝京長岡に軍配が上がったが、両守護神が負けず劣らず抜群の存在感を示したことで、準々決勝にふさわしい戦いとなった。


 勝った猪越は「佐藤選手はもうめちゃくちゃうまかったです。今日は完全に相手の方が上。俺よりも身長がでかくて、まさに安定感がある存在だと思いましたし、彼を超える存在にならなければ優勝はできないと改めて思いました」と熱く語った。一方、敗れた佐藤は冷静に「まだまだ自分に足りない部分も多いですし、選手権ベスト8という成績はこれから先、大学サッカーに進んだ時に看板にはならないと思うので、もっと向上心を持ってやりたい」と先を見据えた。


 性格は違うかもしれないが、それぞれが「上には上がいる」ことを理解して、謙虚に成長曲線を描こうとしている。卒業後、猪越は中央大へ、佐藤は明治大へ進む。ともに関東大学リーグ屈指の強豪で、彼らは新たなステージで再びライバル関係となる。


「もっと自分もいいパフォーマンスをして、『負けた相手が帝京長岡で良かった』と佐藤選手に思ってもらえるようにしたいです」(猪越)


「猪越選手には新潟を背負って頑張ってもらいたいです」(佐藤)


 不思議な縁に導かれて実現したハイレベルなGK対決。今大会を彩った2人の守護神の物語は、この先もまだまだ続いていく。


(企画構成:YOJI-GEN)

安藤隆人
安藤隆人

大学卒業後、5年半勤めた銀行を退職して単身上京し、フリーサッカージャーナリストに転身した異色の経歴を持つ。ユース年代に情熱を注ぎ、日本全国、世界各国を旅し、ユース年代の発展に注力する。2012年1月にこれまでのサッカージャーナリスト人生の一つの集大成と言える、『走り続ける才能たち 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)を出版。筆者自身のサッカー人生からスタートし、銀行員時代に夢と現実のはざまに苦しみながらも、そこで出会った高校1年生の本田圭佑、岡崎慎司、香川真司ら才能たちの取材、会話を通じて夢を現実に変えていく過程を書き上げた。13年12月には実話を集めた『高校サッカー 心揺さぶる11の物語』(カンゼン)を発刊。ほかにも『高校サッカー聖地物語 僕らが熱くなれる場所』(講談社)、があり、雑誌では『Number』、サッカー専門誌などに寄稿。昨年まで1年間、週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!SHOOT JUMP!』を連載した。

スポナビDo

新着記事一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント