箱根駅伝、勝負をかけるのは往路か復路か 分かれた大学の戦略を読み解く

加藤康博

往路からの逃げ切りを図りたい大学は?

学生長距離界のエース・相澤(写真右)ら主力を往路に投入した東洋大。一方で、青山学院大は優勝候補・東海大とのタイム差を気にする 【写真:日本スポーツプレス協会/アフロスポーツ】

 往路で主導権を握りそうなのが東洋大だ。西山は出雲(1区区間10位)、全日本(5区区間11位)と振るわなかったが、調子も戻りつつあり、実績のある1区で起用された。さらに2区の相澤は昨年度から出雲、全日本、箱根の学生三大駅伝で4大会連続区間賞。そのうち直近の3大会は区間新記録と駅伝では圧倒的な力を誇る。

「序盤から高速レースになってほしい」と酒井監督は攻めの姿勢を見せるが、それは復路勝負を考えている大学に前半で差をつけるため。往路3連覇を果たすだけでなく、6区を走る前回区間3位の今西駿介までで後続に差を広げ、逃げ切りでの総合優勝を狙う。

 また、東京国際大も補欠のヴィンセントが1区、もしくは3区のどちらかで起用される可能性が高く、伊藤と並べばこちらも強力だ。同様に2区にラジニ・レメティキを置いている拓殖大は、補欠の赤崎の起用区間次第では往路前半で上位に来るだけの力がある。
 駒澤大は補欠に回った田澤が3区か4区での起用が濃厚。1区中村大聖はユニアバ―シアードハーフマラソン2位の実力者で、2区の山下一貴もこの区間は3度目の起用と、計算が立つ。トップに近い位置で田澤につなぎ、流れに乗りたい。
 山で攻勢に出そうなのが国学院大だ。5区に前回の区間賞、浦野が控える。主力の藤木宏太、中西大翔が補欠にいるが、この2名も当日に往路に区間変更される可能性が高い。前半4区間で上位にとどまり、浦野につなげば目標の往路優勝が見えてくる。

 法政大も5区・青木涼真、6区・坪井慧が前回区間上位で走っているだけに、山区間で一気に順位を上げそうだ。

勝負の行方は復路で決着か

両角監督が「10区で逆転したい」と語るように総合的に優勝を狙う布陣。前回大会経験者の小松(写真)、郡司が最終盤に控える 【写真:日本スポーツプレス協会/アフロスポーツ】

 東海大は往路優勝は狙わず、復路に勝負をかける。

「上位をうかがえる位置で初日を終えたい。先頭と70秒差以内ですね」と両角監督。6区は3年連続で起用されていた中島怜利が登録されていないが、前回大会の区間4位にあたる「58分30秒」でカバーできる人材が育ったとのこと。

 また、補欠に回っている阪口、館澤は復路での出場経験があり、追う展開になっても強さを発揮しそうだ。8区は前回、ここで区間新を出し大会MVPとなった小松がいる。指揮官は最終的に10区で逆転を狙う考えだが、その前にトップに立つ可能性もある。

 青山学院大・原監督は「東海大に勝つためには往路ではリードしておきたい。負けても30秒以内」と見積もる。順当に考えれば往路を走ると目されるメンバーの走力は、総じて高く、好位置につけられる戦力だ。

 5区に前回8区区間2位の飯田貴之、6区は初出場の谷野航平が配されたが、この区間も不安はないと指揮官は言い切った。「どの区間がポイントということではなく、全区間を区間3位以内で走れば総合優勝が見えてきます」と原監督。10区間をミスなく走り、優勝を目指す。

 また、帝京大も前回10区区間賞の星岳が2区に入り、3区は前回区間3位の遠藤大地。総合力の高いチームだけに出遅れさえなければ、終盤まで上位でタスキをつなぐだろう。

 シード権争いも混沌(こんとん)としそうだ。駅伝の鉄則は前半で上位につけること。前回大会で10位までのチームは、すべて往路も10位以内で折り返しており、往路で後手を踏むと挽回が難しくなる。今大会も高速レースとなることは必至なだけに、序盤から激しい争いになることは間違いないだろう。

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著者プロフィール

スポーツライター。「スポーツの周辺にある物事や人」までを執筆対象としている。コピーライターとして広告作成やブランディングも手がける。著書に『消えたダービーマッチ』(コスミック出版)

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