世界が注目、17歳のメダル候補・中村輪夢 BMXで描く東京オリンピックの夢

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1分間は自分だけの時間、そこが気持ちいい

中村の最大の武器、見せ場はそのエアトリックの高さだ(写真は9月に開催された全日本BMXフリースタイル選手権パーク) 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

――では、東京オリンピックに出場できた場合の目標や、どのようなプレー、スタイルを見せたいかを教えてください。

中村 もちろん、出場することができたら1位を目指して頑張りたいです。僕はジャンプの高さにこだわっていて、中国大会で勝てたときも高さを評価してもらえたからだと思います。自分のやりたいことっていうのは、僕たちは結果自体もそうですが、自分が満足のいく走りができたら納得する。そういう感じなので自分の力をすべて出し切りたいですね。やっぱり簡単な技を成功しても満足しないと思うんです。難しい技に挑戦して、それが成功して決まったときは一番気持ちいい。だから、難しい技に挑戦して、成功させて終わりたいですね。

――今年やった演技よりも、来年はさらに上のレベルを?

中村 そうですね。上のレベルの技をやりたいなと思います。

――難しい技に挑戦して成功したときが一番気持ちいいということですが、それ以外にもBMXパークやフリースタイルをやっていて、中村選手が楽しいとき、興奮するときってどのような場面でしょうか?

中村 できない技ができるようになったときですね。あとはBMXパークの大会って他の選手と同時に競っているわけではなく、1分間一人で走るんです。その1分間は自分だけの時間で、自分だけにフォーカスを当てて見てもらえる。そこがうれしいというか、気持ちいいですね(笑)。

――確かに、走っている1分間は自分だけの世界というか、大げさに言えば全世界の目が自分に集まっているということですよね。

中村 はい。もし数人で同時に競っていたら、誰を見ていいか分からなくなる場合もあると思うんですが、BMXパークは一人で走るので、やっぱりそれだけたくさん注目してもらえますからね。

――走っているときは、中村選手はいわゆるゾーンに入る感じになるのでしょうか。それとも周りの風景はよく見えている方ですか?

中村 周りは全然見えていますね。お客さんの声も良く聞こえていますよ。あと応援の声と言えば、BMXパークはライダー同士がよく応援し合うんです。例えば自分の前に走る選手でも応援しますし、「コケろ!」とは誰も絶対に思わないです。その選手のベストのパフォーマンスができて、自分もベストのパフォーマンスができて、それで結果どっちが上かというだけなんです。ライバルなのに応援し合えるというのがBMXパークのいいところだと思いますね。

――そうしたところもBMXパークを見るうえでファンの方に注目してもらいたいところですね。

中村 そうですね、本当に選手同士みんな仲が良いというか、バチバチはしていないですね。特有の文化というか、他の競技とは違うところかなと思います。

平野歩夢選手に聞いてみたいことは……

スノーボードの平野歩夢(右)、松本遥奈と同じ「TEAM FALKEN」のメンバーに 【スポーツナビ】

―― 違う競技という点では、先日、住友ゴム工業株式会社とタイヤのFALKENブランドでスポンサー契約を結び、「TEAM FALKEN」の一員となりました。このチームにはスノーボード、スケートボードで活躍する平野歩夢選手、スノーボードの松本遥奈選手もいて、平野選手はオリンピックメダリスト、松本選手もオリンピアンです。そのような先輩アスリートと同じチームの一員となったことについては、どのように思っていますか?

中村 同じチームになる前からもちろん、僕は知っている選手でしたし競技も見ていました。例えば同じ競技だったらいつでも会えると思うんですが、他の競技の選手とはなかなか会う機会もないですし、それが同じチームとなるとグッと距離が縮まるような感じがしますね。なので、そういうすごい選手たちと同じチームの一員になるというのはすごくうれしいです。

――平野選手とは過去に大会で1回だけお会いしたことがあるということでしたが、2回目の今回(11/28「TEAM FALKEN」発表会見)は何かお話をされましたか?

中村 今回もそんなに時間もなかったので(笑)。でも、こうして同じチームになることができたので、色々と話ができればと思いますね。

――平野選手や松本選手にどんなことを聞いてみたいですか?

中村 例えばオリンピックで結果を出したとして、オリンピックに出る前と出た後とどう変わったか、ということを聞いてみたいですね。

――確かに、中村選手はまだオリンピックに出場したことがないので、実際にそのあたりの想像がつかないですものね。

中村 しかも、僕が出る出ないに関わらず、BMXパーク自体がオリンピックで初めてですから。やっぱり今は注目していただけていますが、オリンピックが終わってからもそのままどんどん今以上に注目していただけるように頑張りたいので、オリンピックに出る前と出た後にどうなるのかというのを聞いてみたいですね。

――そうですね、これはBMXパークに限ったことではなくて他の競技、種目でもそうですが、オリンピック期間中は乱暴な言い方をすれば放っておいても盛り上がりますけど、競技全体のことを考えればやっぱり“その後”が大事になってきますよね。

中村 はい、そうだと思います。

日本、世界、誰からも愛される選手になりたい

「世界中の誰からも愛される選手になりたい」 【スポーツナビ】

――それらのことも含めて、中村選手は将来、どのようなBMXのライダーになりたいと思っていますか? 理想のBMXライダー像、アスリート像だったり、自分が求めているスタイル、BMXを通してこういう世界観を表現していきたいなど、教えてください。

中村 Xゲームズでも勝ちたいと思っていますし、今でも僕があこがれている選手がいるんですが、その選手は全世界から本当に愛されている選手なんです。僕も日本、世界から「中村輪夢みたいになりたい」と思ってもらえるようなライダーになっていきたいです。

――中村選手があこがれている選手というのは?

中村 アメリカのデニス・エナーソンという選手です。BMXのフリースタイルはストリートとかパークとか種目がめっちゃあるんですけど、デニス選手は何でもこなせちゃう人なんです。例えばパークで世界一になったらパークの選手から愛されたり、尊敬されたりするんですが、色々な種目、方面から好かれる選手になりたいですね。

――ということは、中村選手もパークだけではなくフリースタイルの色々な種目に挑戦していきたい?

中村 はい、そうですね。僕はまだ17歳なので、これからどうなるか分からないですけど(笑)、色々なことに挑戦してきたいと思っています。

――では、最後に、中村選手が東京オリンピックに出場できた際には、中村選手の走りや演技を初めて見るという人も多いと思います。改めてご自身のこういうところを見てほしい、BMXのこういうところを楽しんでほしいというメッセージをお願いします。

中村 僕のこだわりはジャンプの高さで、それは普通の小さな大会でもオリンピックでもこだわってやっている部分なので、そこを絶対に見てほしいですね。BMXパークは本当にダイナミックで、お客さんの声援で僕のテンションも上がりますし、いつも以上に、普通じゃ跳べへんような高さも跳んでやろうという気持ちにもなります。なので、一緒に楽しんで盛り上がってもらえればいいかなと思いますね。

――BMXパークを応援する際には、特に何か決まりがあるとかではなく、自由に応援していいんですよね?

中村 そうですね、名前を呼んでもらったりとか、すごい技が決まったときには「イエーイ!!」みたいな声で盛り上がってほしいです。日本のお客さんも恥ずかしがらずに(笑)。

――はい(笑)。東京オリンピックだと初めて見る日本のお客さんも多いでしょうし、これはどう応援したらいいのだろう?と戸惑う人もいるかもしれないですからね。

中村 日本の人は少し恥ずかしがり屋というか(笑)、でもそこは恥ずかしがらずに「イエーイ!!」って盛り上がってもらえれば面白いかなと思います。

――そうやって選手とお客さん、会場がいっしょになって盛り上がるというのもBMXパークの魅力ですね。

中村 はい、そうだと思います。まずは東京オリンピックに出場できるように頑張りますので、ぜひ応援よろしくお願いします。

中村輪夢(なかむら・りむ)

2002年2月9日生まれ、京都府出身。BMXライダーである父の影響で3歳からBMXに乗り始め、小学校高学年時には全てのキッズ・クラスの大会で優勝。中学生でプロに転向し、以降も本場アメリカをはじめ国内・海外の数々の大会で優勝、好成績を残す。2017年には第1回全日本選手権で初代チャンピオンに輝くと、2019年W杯は4月広島大会で日本選手初の2位となり、11月中国大会で初優勝。年間ワールドチャンピオンにも輝いた。また、8月にアメリカで開催されたXゲームズでも史上最年少で銀メダルを獲得するなど、今、世界が注目する17歳の若きライダー。

BMXフリースタイル・パーク

曲面やスロープを複雑に組み合わせた施設で行われる。1分間にトリック(ジャンプ、空中動作、回転などの技・テクニック)をいくつも行い、点数を競う採点競技。技の難易度や独創性、流れ、コントロール、着地などが採点の対象となる。(引用:東京2020組織委員会)

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