WSD歴代編集長が選ぶ「史上最高の名手」 初代・粕谷秀樹氏、9番は“バティ推し”
S・ラモスとゴディンは確実にボールを捉える
三者がそろって最高評価を与えたS・ラモスだが、「信じられないようなポカをする」という指摘も 【Getty Images】
粕谷:ダンカン・ファーガソンとかナイアル・クインはダメ? ファーガソンは(ウェイン・)ルーニーの憧れの人。ヘディングだけで飯を食ってた。あとは同じエバートンの(ティム・)ケーヒルも強かったよ。大きくはなかったけれど。
大類:サイズに恵まれていない選手では、(カール=ハインツ・)リードレが印象深いです。
粕谷:ラツィオのな。
大類:(イバン・)サモラーノも同じ系統ですよね。
粕谷:(ヤン・)コラーも強かったよな。
大類:あのデカさは反則ですよ(笑)。でもポストプレーヤーという印象が強くないですか?
粕谷:確かにそうかもな。
吉田:プレミアにもデカいフォワードがいましたよね?
粕谷:(ピーター・)クラウチな。
大類:他にも(トーレ・アンドレ・)フローとか(アンディ・)キャロルとか、プレミアにはのっぽのフォワードが多いですね。
粕谷:クラウチとフローはストロングヘッダーではないよね。キャロルはそうだけど。
吉田:センターバックではセルヒオ・ラモスと(ディエゴ・)ゴディンかな。セットプレーで確実にボールを捉えるからな。
粕谷:それは大きいよね。キーパーとディフェンダーにとっては嫌だろうから。
大類:C・ロナウドがいた頃のマドリーのセットプレーは脅威でしたよね。ラモス、ロナウドとスーパーなヘッダーが2人いて、さらにペペと(ラファエル・)バランですから。
吉田:ロナウドは腹筋と背筋がすごいんだろうな。
粕谷:空中で止まってるもんな。
大類:ラモスのほうがロナウドより上だと思うんですが、おふたりはどうでしょう? ラモスはセットプレーからのヘッドで10点くらい取ったシーズンもありますから。
粕谷:ラモスかな。
吉田:信じられないようなポカをしますけどね。おい、どうしちゃったんだよ、って(笑)。
大類:ミスをしてもまったく悪びれないですよね。あのメンタリティーには感心しますけど(苦笑)。
粕谷:昔の選手だけど、俺はマーク・ヘイトリーが一番のストロングヘッダーだと思うな。80年代のイングランド代表選手で、ミランにいたこともある。ミラノダービーでペナルティーアークから決めたヘディングシュートは本当にすごかった。
■WSD歴代編集長が選ぶ史上最高のヘッダー
セルヒオ・ラモス(R・マドリーなど)
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ジュニーニョはPKみたいに決めていた
粕谷氏、大類氏が推したジュニーニョはブレ球の元祖。05-06シーズンのCLでは全4ゴールをすべてFKで決め、リヨンを3シーズン連続の8強に導いた 【Getty Images】
粕谷:これはまた悩むな。それぞれの好みになるんじゃないか。
大類:あとは思い入れですかね。あの時のあのFKが衝撃的だった、とか。
吉田:バッジョであるな。インテル時代、チャンピオンズリーグ(CL)出場権を懸けたプレーオフ。(マルチェロ・)リッピが監督の時で、バッジョはずっと干されてて。
粕谷:相手はパルマじゃなかったかな。
吉田:たしか、そうです。その試合で芸術的なFKを決めて。あれがすごく印象に残ってるんですよね。うわ、決めたよ、って。意地の一発ですね。あの試合では難易度の高い左足ボレーも決めて。インテルはバッジョのお陰で出場権を獲得したようなものです。
大類:ロベカル(ロベルト・カルロス)だと、トゥルノワ・ド・フランス(97年にプレワールドカップ=W杯として開催された国際大会)ですね。あれは衝撃的でした。
吉田:(ロナルド・)クーマンなんか、あの一発しか覚えてない。
大類:チャンピオンズカップ(当時)決勝ですね。サンプドリア戦。
粕谷:クーマンのキックは「牛殺し」とか言われてたよな。誰が見たんだよって(笑)。
大類:あのFKがなければ、サッカーの歴史が変わってましたよね?
粕谷:そうだろうな。バルサが負けてたら今のバルサはなかったかもしれないし、サンプのその後だって違っていたかもしれない。
吉田:ベッカムなら、W杯出場を決めたFKだな。
粕谷:ギリシャ戦な。日韓大会の予選最終戦。
吉田:試合の後にすぐ原稿を書かなきゃいけなくて。それもあって印象に残ってますね。
粕谷:精度が一番高かったのは誰だろうな。ジュニーニョ(・ペルナンブカーノ)なのかな。
吉田:ジュニーニョはブレ球の元祖ですよね?
粕谷:そう。元祖だな。
大類:ジュニーニョは別格だと思いますね。PKみたいに当たり前のように決めてましたから。それもかなりの距離のキックを。ロングレンジのほうが得意でしたよね。
粕谷:全盛期の(ジャンフランコ・)ゾラもそうだよ。聞いたことがある。PKよりFKのほうが簡単だって。
吉田:(シニシャ・)ミハイロビッチはハットトリックをやりましたよね?
粕谷:やったな! FKだけでハットトリックなんて、とんでもないよ。しかも一本、すごく長い距離のキックがなかった?
吉田:ありましたね。あれはすごかった。
大類:ユナイテッド時代のロナウドはどうだったんですか? マドリーの時は全然入らなくて。枠にさえたまにしかいかなかったですから。
粕谷:決めてた印象はあまりないな。ユナイテッドでいうと、セットプレーは(デニス・)アーウィンがうまかったよね。
大類:入らないのにキッカーを譲らないんですよね。(ガレス・)ベイルが入団してからですよ。他の選手に蹴らせるようになったのは。
吉田:代表でもそうだよ。試合前の練習でひとりチームから離れて、ひたすらFKを蹴ってる。それがまた入らない。
大類:そろそろ結論を出しますか。僕はジュニーニョ推しです。
吉田:ミハイロビッチかな。
粕谷:ゾラは捨てがたいけどな。ジュニーニョだろうか。CLで決めまくってたしな。
■WSD歴代編集長が選ぶ史上最高のFKキッカー
ジュニーニョ・ペルナンブカーノ(リヨンなど)
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海外サッカー専門誌『ワールドサッカーダイジェスト』の歴代編集長が集結 【YOJI-GEN】
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。2001年に独立し、ジャーナリストとしてTV解説、雑誌制作などさまざまな分野で活躍。特にプレミアリーグ、チャンピオンズリーグを主戦場に解説者として多くのファンに支持され、討論番組などのパーソナリティー、コメンテーターとしても好評を得ている。1958年生まれ。
吉田治良(よしだ・じろう)(写真左)
ワールドサッカーダイジェスト編集部のオリジナルメンバーで、2000年から編集長。同職を約10年務め、姉妹誌サッカーダイジェストなどの編集長も歴任した。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動。1967年生まれ。
大類聡(おおるい・さとし)(写真右)
1997年から21年にわたりワールドサッカーダイジェスト編集部に在籍し、リーグ・アン、ラ・リーガ、セリエAなどを担当。2014年から18年まで編集長を務め、ロシアW杯後に退職。1973年生まれ。
(企画構成:YOJI-GEN)