連載:アスリートに聞いた“オリパラ観戦力”の高め方

右代啓祐が追求する記録更新への伸びしろ 十種競技で示す「心技体のアップデート」

C-NAPS編集部

世界の超人たちと競い合うことによる充実感

筋骨隆々とした超人たちがしのぎを削る十種競技。過酷ゆえにその鍛え抜かれた肉体はとにかく美しい 【Getty Images】

 十種競技はフランス、エストニア、カナダの3カ国が特に強いですね。フランスには世界記録保持者のケビン・マイヤーがいます。彼とはロンドン五輪の時からずっと競い合ってきたので、強くなっていく過程も見てきました。世界記録保持者と一緒に試合ができるのは、もちろん特別なことですし、彼に近づくことができればメダルも現実的になると思っています。

 カナダにはピアス・ルパージュという2メートル超えで100メートルを10秒3くらいで走る超人がいて、エストニアはいつも入賞圏内に選手が入る層の厚さがあります。この3カ国のメダル争いは面白いですし、そこに私も食い込んでいきたいですね。

 十種競技をするうえでは体の大きさは重要ですが、プラスして総合的な運動神経の良さが問われます。例えば、2メートル以上の大男が体のポテンシャルを最大限に発揮できたら、当然それは強いですよね。自分の体をいかに使いこなせるかが重要なんです。そういう意味では海外の強い選手たちはプロ意識が高く、心技体を高めることに余念がありません。選手がサラリーを出してコーチを雇うのが一般的ですし、海外の選手の十種競技に懸ける思いやハングリー精神はすごいですよね。決して恵まれた体格や身体能力だけで勝負しているわけではないんです。

 そんな研鑽(けんさん)を欠かさない超人たちとお互いを称え合えるのも十種競技ならでは。ゴールした後に選手同士が自然とハグし、メダリストだけではなくて参加した選手全員でウイニングランを行う光景はすごく感動的です。最後に選手はもちろん、観客全員とも一体になれるんですよね。十種競技の選手は極限まで肉体を鍛えた超人ばかりですが、海外にはモデルとして活躍している選手もいます。顔も体もカッコいいイケメン選手もいるので、そうした部分からも十種競技に興味を持ってもらえればと思っています(笑)。

「東京五輪に出場してメダルを獲得する」という揺るがない決意

穏やかな表情で世界陸上の際の心境、そして東京五輪への思いについて語る右代 【C-NAPS編集部】

 ドーハでの世界陸上ではさまざまなことを経験しました。「内定取り消し」を告げられた時は本当にショックでしたが、周囲の方々からたくさんの励ましの声や応援をいただき、本当にありがたかったです。中でも所属する国士舘大学の岡田雅次監督からの「俺はチケットをギリギリまでキャンセルしないぞ。だから、必ずドーハに行けよ」の言葉には奮起しました。「落ち込んでいる場合ではない」と切り替えて練習を再開できました。今、自分が居る環境は本当に幸せなんだと思えました。

 推薦枠でなんとか出場が決まり、さらに16位という世界陸上での自己最高位でしたが、狙っていた12位、8000点には届きませんでした。8000点以上であれば、世界ランキングで24位以内に入り、五輪出場の24枠内に近づけるはずでした。現状はまだ25位なので、来年行われる日本選手権で8000点以上を出して優勝することで、東京五輪出場を手繰り寄せたいですね。

 自国での五輪は出場できればこれ以上ない幸せですし、日本で開催されるのが信じられないほど不思議な気持ちですね。過去2大会、五輪に出場しましたが、自分の想像を超える雰囲気でした。名前を呼ばれた瞬間の大歓声や拍手が地響きみたいだったあの感覚はいまだに忘れられません。東京五輪ではそれを超える状況になるのは分かっていますが、きっとその想像以上なんだろうと思います。今から楽しみで仕方がありません。出るだけじゃなくて絶対にメダルを獲得したいです。

 実は携帯の待ち受け画面を東京五輪の金メダルの画像にしています。いつでもどこでも「メダルを獲得するんだ」という意識を持って生活するためですね。東京五輪でのメダル獲得が一つの集大成ではありますが、その後もケガをしない限り競技は続けるつもりです。体が動く限り挑戦し、常にアップデートし続ける自分でありたいと思っています。

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著者プロフィール

ビジネスとユーザーを有意的な形で結びつける、“コンテキスト思考”のコンテンツマーケティングを提供するプロフェッショナル集団。“コンテンツ傾倒”によって情報が氾濫し、差別化不全が顕在化している昨今において、コンテンツの背景にあるストーリーやメッセージ、コンセプトを重視。前後関係や文脈を意味するコンテキストを意識したコンテンツの提供に本質的な価値を見いだしている。

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