B1中地区は4強時代の到来か!? 新シーズンに向けたキーマンたち

大島和人

B1最強スコアラーたちがそろった三河

三河は日本屈指のシューター川村(写真)や、昨季得点王のガードナーが加わる 【(C)B.LEAGUE】

 シーホース三河は旧リーグ時代から日本一の常連だが、昨季は中地区4位にとどまった。1995年から指揮を執る鈴木貴美一HCがプレーオフ(CS)出場を逃したのは2度目というから、ちょっとしたハプニングだった。

 昨季は比江島慎、橋本竜馬がチームを去った。帰化選手の桜木ジェイアールはまもなく43歳で、最盛期に比べればどうしても落ちる。過渡期の難しさがあったに違いない。

 しかし終盤戦で三河は大卒新人の熊谷航を正PGに起用し、拓殖大を中退してプロ入りした岡田侑大も長いプレータイムを与えた。二人の適応と成長は目覚しく、結果が出ずとも希望の見えたシーズンだった。

 岡田は卓抜なハンドラーで、スクリーンを生かしてズレを使うのがうまい。3Pシュートの名手で、昨季は1試合平均10.3得点を記録。2018-19シーズンの新人王にも輝いた。21歳の年齢を考えても、将来の日本代表を背負うべき逸材だ。

 金丸晃輔は昨季、日本人選手では最多の1試合平均17.9得点を記録。日本最高レベルのシューターだ。他の選手にとってはタフショットでも、金丸は「普通のシュート」にしてしまう。加えて今季は川村卓也も加入し、日本人シューターがそろった。

 トドメは新潟からのガードナー加入だ。203センチ・132キロの重量級ながらスムーズなステップ、柔らかいシュートタッチを持つ彼は、三河のラストピースとなるだろう。機動力の高い選手の不足は感じるが、「決める」ことに限ればB1最高の陣容をそろえている。

三遠と横浜はチームの底上げが鍵に

在籍3年目を迎える田渡(21番)は、名実ともに横浜の柱を担うことになるだろう 【(C)B.LEAGUE】

 三遠ネオフェニックスは出直しのシーズンとなる。昨季は22勝38敗で東地区5位と沈み、藤田弘輝HCも退任。また田渡修人(→サンロッカーズ渋谷)、長谷川智伸(→琉球ゴールデンキングス)といった主力級がチームを去り、外国籍選手も入れ替わった。開幕前のプレシーズンマッチはポイントガード(PG)鈴木達也の負傷も影響したのか、レバンガ北海道に大敗を喫している。

 一方で35歳のビッグセンター太田敦也は健在。センターを任せられる日本人プレーヤーがいることで、外国籍のウイングプレーヤーを起用できるのは三遠の強みと言っていい。新加入のデビン・イーバンクスは初来日だが、元NBAプレイヤーで、昨季はフランスリーグの得点王に輝いている大物だ。

 横浜ビー・コルセアーズは14勝46敗の中地区最下位で昨季のレギュラーシーズンを終えた。レバンガ北海道との残留プレーオフにも敗れている。ライジングゼファー福岡へのB1ライセンスが不交付となり、B2からの昇格も1チームにとどまったため、このカテゴリーに残った。

 70歳を迎えた名伯楽トーマス・ウィスマンHCは留任を果たしたが、彼の手腕を持ってしてもチームの底上げに苦労している感は否めない。

 今季は前述のように長くチームを支えた川村が三河へ移り、細谷将司も秋田ノーザンハピネッツへ移籍した。特別指定選手としてプレーしていた有望株・中村太地は京都ハンナリーズに進んだ。

 一方で抜群の守備力とシュート力を持つアキ・チェンバースや、日本人の若手PGでは屈指の実力を持つ生原秀将が加入。大きなプラスは感じないが、現有戦力の底上げが鍵になるだろう。

 田渡凌はNCAA2部の主力として活躍して凱旋帰国し、Bリーグでは3季目のシーズンとなる。昨季は1試合平均9.7得点、4アシストと数字も伸ばし、今季は名実ともにチームの柱を担うことになるだろう。スキルはもちろん気の強さ、リーダーシップも「PGらしさ」を感じる26歳で、代表入りも目指してほしい人材だ。

 東地区の華やかさに目を奪われがちだが、中地区も見どころは多い。昨季は新潟、富山が躍進を果たし、今季は川崎と三河も巻き返してくるだろう。一方でB1とB2上位の格差が消えつつある中で、三遠や横浜がサバイバルするためには「プラスアルファ」が必要になる。優勝や代表という夢とはまた色合いの違う、勝負のシビアな現実もある。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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