ラグビーW杯を国民的行事にするために 民放プロデューサー「視聴率35%狙う」

スポーツナビ
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提供:(公財)日本ラグビーフットボール協会

ファーストスクラムを大事にする女優、山崎紘菜

会場からの質問に答える両局のプロデューサー 【スポーツナビ】

 講演に続いて、来場者と渡辺氏、大谷氏の質疑応答が行われた。以下はその要旨。

――2017-18シーズンはトップリーグを全試合放送したJ SPORTSさんですが、昨シーズンは放送数が減りました。理由を教えてください。

大谷 オンデマンドでは昨年も全試合やっているんですけれども、いわゆる“オンデマンドのレベル”の映像までしか作れなかったので、放送は全試合できませんでした。(予算減の影響?)そういうことです。

――録画できるオンデマンド配信をもっと増やしてくださいというご意見もありました。

大谷 個人の見解ですが、オンデマンドでも個人が楽しむ範囲で録画できるようになればいいのになとは思っています。それを勝手にアップロードできないような技術が今後出てきたらいいですよね。

――日本テレビ・渡辺さんに、「試合中のCMを無くせないか」ときています。

渡辺 今は試合中にはCMを入れていないと思いますよ。

――ほんとですか? ハーフタイムくらい?

渡辺 ハーフタイムに立て続けに入れています。日本代表の試合中には絶対に入れないです。サンウルブズ戦は夜中にダイジェストでやっているんですけど、それはダイジェストなので、いっぱい入れています。

――そこはまあ、CMあっての放送ですもんね?

渡辺 そうですね。今年は比較的でもスポンサーさんがついてくれている状況なので、なるべく(CMを)入れさせていただけたらなと。

――東京五輪のラグビーはどの局が放送するのですか?

渡辺 まだ東京五輪の放送枠は、どこがどうやるかっていうのは決まっていないんです。まだ代表選手とかも決まっていないじゃないですか? だから放送枠を振り分けることもできなくて。もうちょっと時間かかりそうですね。

 ちょっと専門的な話になるんですけれども、五輪競技は優先種目とそうではない種目に分けられます。優先種目とは、要はすごい人気のスポーツ。例えば「女子レスリング・○○キロ級」が優先種目だったら、(権利を獲得した放送局は)絶対に放送しなければいけなくて、他局はその間絶対に放送してはいけない。

 残念ながらリオの時には7人制(ラグビー)は優先種目じゃなかったんです。だから放送したいって言っていれば、その時間に誰でも乗れた状況だったんです。

――では今回もそうなる可能性もあるってことですね? 男子400メートルリレーとか、注目種目たくさんありますし。

渡辺 そうなんですよ。(男子は)前回ベスト4に残っているチームなわけですから、優先種目になってくれないかなと。でも優先種目にならなかったらならなかったで、逆にどこの局も放送できる形になるので、やりやすくなる面もあります。

――ファンゾーンの中継は実況があるのでしょうか? ある場合担当局は決まっているのでしょうか? 質問者は女優・山崎紘菜さんのファンだそうです。

大谷 ファンゾーンというか、パブリックビューイングの映像はJ SPORTSが主にやることになっています。あとは、イベント化するパブリックビューイング会場なら別途出演者の方がいたり、うちの中継で村上さんの解説をそのまま流すこともあるでしょうし、それぞれの会場によると思いますね。

渡辺 ちなみに山崎紘菜さんは相当すごいですよ。ラグビーへの「好き」がすごい。

 去年の夏、大分での日本代表戦の副音声に、山崎紘菜さんに出ていただいたんです。ブルゾンちえみさんと山崎さんと、うちの笹崎(里菜)というアナウンサーが副音声で、視聴者の方からのツイッターの質問に答えるっていう企画をやっていたんですよ。で、ちょっと進行した後に「ではここでツイッターの視聴者からの質問なんですけど」って言った瞬間に、山崎さんが「すいません、ファーストスクラムなので終わってからにしませんか」って(笑)。

 ファーストスクラムをそんなに大事にする女優さんがいるんだ、この子はなんてラグビー好きなんだろうと思って。

――今のでわれわれも好きになりましたね。

渡辺 この一言でこうも簡単に皆さんの心を(笑)。ファーストスクラムを大事にする女優さんは大切にしなきゃいけないと思って。山崎紘菜さんは今『Going』にも出ているのでぜひ応援してあげていただければ。

――渡辺さんへ、「トップリーグをもっと取り上げたほうがいいのではないでしょうか?」。

渡辺 トップリーグの最終ゲームは日本選手権の決勝となってしまうので、必ずNHKさんの放送になるため、なかなか難しいものがあるんです。毎週のニュースでは比較的取り上げていると思いますが、まだ尺が短いので、野球に負けないように頑張ります。

テレビマンが注目する日本以外のチーム・選手は!?

――今回初めてラグビーの放送を見るルールがよくわからない方に、どう説明を工夫しますか?

渡辺 もう今やっているんですけど、小さいワイプ画面でCG含めたアニメーションで「ノットリリースザボールはこういうことだよ」とか、「ノットロールアウェイは、ノックオンはこういうのだよ」と説明していて、これからも頑張って入れるっていうのが一つ。あとはデータ放送でルール、用語解説を必ずやっているので、そこで見てもらえるように。

――それはW杯でもやりますか?

渡辺 やります。前回15年大会では、反則名は必ず出るようにして、視聴者自身で消すこともできるシステムにしていました。今回はそうではなく、必ずテロップやCGで入れる形にしようかなと思っています。

――J SPORTSは何かありますか?

大谷 うちは特に別途ルール解説をするというよりは、解説の方が最先端の用語、現場レベルでトップのコーチングをするような方たちが発するような用語が出たときに、それをしっかりフォローしてお伝えしていくというところを考えています。ルールを分かりやすく説明するということは、ラグビーに関しては一番難しいんですね。

――試合以外のラグビー番組、企画でなにか考えているものはありますか?

渡辺 今「ONEラグビー」というラグビー番組をやっています。あと今思っているのは、実は去年もやったんですけど、YouTuberさんとコラボして代表戦をやりたいなと思っていて。前回やったのが裏配信というか、画面には一切試合映像が出てこないのですが、試合を見ているYouTuberさんが好き勝手いろいろ喋っている姿を通して試合を楽しむ、という。

――なるほど。

渡辺 前回やったのが兄者弟者さん、東海オンエアさんというYouTuberさん。皆さんご存じないかもしれませんが、それぞれ260万、450万くらいのチャンネル登録者数があるわけです。

 テレビってなかなかポジティブな意見が届いてこないんですね。ネガティブなのはあっという間に来るんですけど……。兄者弟者さん、東海オンエアさんとやったら、twitterなどで「ラグビーと東海オンエアさんがコラボするなんて日テレさんありがとう」って。こんなリアクション今までなかったなっていう。テレビだけでは届いていない層に、「あ、届いてる」っていう実感がすごくあったんですよね。

 だからなるべくそういうものをやってみるっていうのはすごく良いなと思っていて。今はネットとテレビがけんかする時代でもないので、お互いがお互いの良いところを取り合って、全体がお祭りになればいいなと。うまいこと代表戦で裏配信などをやっていって、W杯が楽しみになる人をちょっとでも増やしたいなと思っています。

――J SPORTSさんはいかがですか?

大谷 『ラグビーワールドカップ2019物語〜スクラム組もうぜ!〜』という番組を毎週火曜日の夜にやっていて、その中でいろいろな試合の“とある部分”を取り上げています。

 例えばW杯の開催会場を紹介していく企画コーナーがあるのですが、それをまた別途まとめて番組化したりとか。あとは、ちょっとインバウンドを意識して英語で配信したり。いろいろな試みをやっていこうと考えています。

――W杯でもオンデマンド配信をやるのですか?

渡辺 オンデマンドでもやります。生配信ではない試合もあるんですけど、全試合オンデマンドで視聴できる形になります。

――お二人の注目選手、注目チームを日本代表以外で教えてください。

渡辺 選手でいうと、僕はマルコム・マークスです。南アフリカの2番なんですけど。ジャッカル(タックルで倒れた相手選手からボールを奪うプレー)をこんなにも簡単にできるのかと、しかもそれを連発するんですよね。びっくりしました。

 チームはやっぱりライバルになるスコットランドですかね。決勝近くまで残ってほしいと思うのはフィジーでしょうか。

――大谷さんはどうですか?

大谷 実はマルコム・マークス、スコットランドで。まったく一致しちゃったんですよね(笑)。僕がラグビーはじめたのが、(当時在住だった)スコットランドだったんです。ダークホースとして気になるのはアルゼンチンですね。もともとティア2(中堅国)だったなかで、ちょっとずつティア1(強豪国)に肉薄して、07年W杯で3位になって。今やスーパーラグビー決勝にアルゼンチンのジャガーズが残るくらいですから。

 選手をもう1人挙げるならボーデン・バレット(ニュージーランド)でしょうか。先日(前サンウルブズHCの)トニー・ブラウンにインタビューをして、世界のトレンドをいくつか聞いた中に「キック」っていうワードが出たんです。ボーデン・バレットはキックとパスが同じ……われわれの感覚で言うと、パスをする感覚でキックをするという。ちょっとスキルが超越していて、スケールの大きさに注目したいなと思っています。

――「ラグビーを文化に」というお話がありましたが、W杯後にラグビーの番組を検討していたりしますか?

渡辺 今のところはないですが、W杯で人気者になったラグビー選手を、年末年始にこぞって出していきたいなと……(笑)。『ウルトラマンダッシュ』という、アスリートがいろいろなことにチャレンジする特番があるのですが、実は前回15年W杯後、16年の正月に五郎丸(歩)選手にオファーしたんです。その時は断られてしまったのですが、そういうのは画策しています。

 稲垣啓太選手はこの前『さんま御殿』に出演していただいたのですが、さんまさんがすごい気に入っちゃって。「彼はもうW杯の後に人気者になるやろ」みたいに言ってくださったと聞きました(笑)。

あなたにとってラグビーW杯日本大会とは?

ラグビーに対する熱い思いを語る大谷氏(左)と渡辺氏 【スポーツナビ】

渡辺氏

ラグビーをサッカーと同じ、それ以上のものにしたいです。1年に何回かある代表戦をゴールデンで放送するということはなかなか厳しいのが現状です。それは人気の面、視聴率の面、収入の面で難しいのですが、サッカーのキリンチャレンジカップのように、リポビタンDカップをゴールデンで普通に放送される状況を作りたいというのが理想です。実は16年にゴールデンで2試合を放送しているのですが、そこで結果が出なかったのでそれ以降できていないという状況があります。

 私は09年からラグビーの担当になって、2年間抜けている時期もありましたが、ずっとラグビーをメジャースポーツにするために遮二無二にがんばっているところです。足りないと思えばいくらでも足りないのですが、全部の方策をひとつひとつ地道にやっていって、最後に盛り上がるかどうかは本当に神頼み。19年の日本大会を受けたラグビーは違う状況に、ちゃんとゴールデンで放送するんですというものになってくれるといいなと思っています。

大谷氏

 地上波のゴールデンでやるようなコンテンツになっていくと、注目度も変わってきて、発言ひとつひとつの社会的な影響力も変わってくると思います。そうなるとプロ選手としてしっかり成り立つ層が増えていく、そしてラグビーをやっている子ども達の夢が広がっていくと思います。日本大会はそういうチャンスだと思います。

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