大谷翔平が神に迫った? ボストンで放った「人間離れな」一撃

丹羽政善
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提供:日本航空

先日のレッドソックス戦の打撃練習で、特大の一撃を放った大谷 【Getty Images】

 大谷翔平(エンゼルス)が神に迫った。

 といっても、打撃練習の話である。しかし、打撃練習であろうと、過去にあそこまで飛ばした選手はいなかった。

“Section 42, Row 37, Seat 21”

 ボストン・レッドソックスの本拠地、フェンウェイ・パークの右翼席上段には1席だけ赤く塗られたシートがある。ホームプレートからの飛距離は502フィート(約153メートル)。1946年6月9日、「最後の4割打者」「打撃の神様」として知られるテッド・ウィリアムズの放った特大の当たりが、そこに落下したと伝えられる。84年から背もたれが赤く塗られるようになると、「The Lone Red Seat(たった一つだけの赤い席)」として、球場の名所になった。

 しかしながら、1912年の開場以来、今も最長と語り継がれている一方、現代になってもその距離を超えるどころか、近くまで飛ばす選手さえ現れないことで、多くの選手は、その事実を疑うようになった。

 人間の限界を超えている――と。

あのオルティーズが「金属バットでも無理」

通算541本塁打の大砲・オルティーズもウィリアムズの最長不倒弾に挑んだが、「金属バットでも無理だった」と告白 【Getty Images】

 トレーニング理論が進化し、選手らの体つきは当時とは比較にならない。道具も変わった。それなのに勝負にならない。2016年8月24日付の『ボストン・ヘラルド』紙に、身長190センチ、104キロという体格から通算541本塁打を放ち、同年限りで引退したデビッド・オルティーズのこんなコメントが残っていた。

「今の選手らは、みんなパワフルだ。テッド・ウィリアムズ氏がそうではなかった、とは言わない。でも、俺達が今、どれだけ遠くまで飛ばしているか、みんな知っているはずだ。それなのに、誰もあそこまでは飛ばせないのはなぜだ? 俺だってそれなりに大きなホームランを打ってきたのに、まったく届かない。あるとき、金属バットで打ってみたが、それでも無理だった」

 これまで、歴代のスラッガーが挑み、屈してきた。長く球界屈指のパワーヒッターとして君臨した彼の言葉だけに、説得力がある。

 ところが先日、大谷がさらっとその近くまで打ってしまった。打撃練習で放った当たりが、「The Lone Red Seat」の5列下に落下したというのである。

 その事実は、瞬く間に驚きとともに報じられた。結果として、ウィリアムズの飛距離にも信ぴょう性が生まれることになった。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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