八村、渡邊らサマーリーグ・カルテットが“史上最強”日本代表に還元できること

杉浦大介

渡邊が勝負の年に見せた成長ぶり

渡邊はサマーリーグ途中で負傷も、それまでのプレーで成長ぶりを印象づけた 【Getty Images】

 サマーリーグに参加したカルテットの中では唯一、2年連続の出場となった渡邊も貫禄を感じさせるプレーを見せてくれた。ラスベガスの前に行われたユタでのサマーリーグも含め、合計4試合で平均14.8得点、7.3リバウンド。明らかにより積極的になり、それでいて数字に残らないプレーでの貢献度も変わらない。左足を痛めてベガスでの4戦目以降は欠場を余儀なくされたものの、成長ぶりは現地でも評判だった。

「ユウタがNBAに定着するためにはボールハンドリング、ペリメーターのシュート力、ガード選手とマッチアップできるだけの守備力の向上が必要。あと1年はかかると思っていた。しかし、今夏のプレーを見る限り、私は間違っていたのかもしれない」

 昨季中からメンフィスで渡邊をよく見ていたあるNBAスカウトは、サマーリーグでの躍進ぶりに舌を巻いていた。もともと練習熱心さと聡明さで知られる渡邊は、環境に慣れることで大きな力を発揮するタイプ。ジョージ・ワシントン大での4年間でも、1年ごとに着実に平均得点をアップさせたことを忘れるべきではない。

 24歳ともうプロスペクトとしては若くない渡邊にとって、NBAの2019〜20シーズンは間違いなく勝負の年。昨季はグリズリーズで15戦の出場だったが、今季はプレー機会を増やし、念願の本契約ゲットにつなげたいところだ。

 そして、複数のポジションが務まる万能派は、日本代表でも攻守の要を任せられるに違いない。右足首の故障ゆえに12、14日の強化試合に出られないのは残念。それでも日本が生んだ“選ばれし男”は、中国でのW杯では間違いなくキープレーヤーの一人になるはずだ。

日本のバスケ界が4人にかける期待

“史上最強”の代表チームは日本バスケ界に明るい未来を見せてくれている 【Getty Images】

 八村、渡邊という“ビッグ2”ほどの数字は残せなかったものの、ダラス・マーベリックスの一員としてラスベガスでプレーした馬場も随所にインパクトを残した。特に7月7日のヒューストン・ロケッツ戦では8得点、3リバウンド、1ブロック。自慢の身体能力は十分に通用し、「アメリカでもやっていける」と自信を深めたようだった。

 ニューオーリンズ・ペリカンズのメンバーに含まれた比江島は、日本人カルテットの中で唯一、無得点に終わった。自身にできる部分より、足りない面を突きつけられる厳しいステージだったかもしれない。ここでの悔しさを日本代表での戦いにぶつけてほしい。比江島の得点力も重宝されるW杯の舞台は、もう間近に迫っているのだ。

 8月31日に中国で開幕するW杯は、東京五輪の前哨戦であり、大事な試金石。楽しみなビッグイベントに、日本は八村、渡邊、馬場、比江島、ニック・ファジーカス、シェーファー・アヴィ幸樹といったアメリカでもプレー経験のある選手たちを大挙送り込む。間違いなく過去最大の注目を集めるナショナルチームであり、中でも4人のサマーリーグ組にかかる期待は大きい。

 本場の空気とテンションを感じたカルテットは、世界の舞台でその成果を発揮できるのか。“史上最強”と称される代表チームを、熱く引っ張っていってくれるのか。彼らの肩越しに、日本バスケットボールのさらに明るい未来がうっすらと透けて見えてくるようでもある。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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